マリリンとボー、MRを観る (ショート・ストーリー)


ニコール(以下N)「こんにちは、私はニコール・キッドマンです。きょうは、マリリンさんとボーさんのおふたりに、私の出演した映画『ムーラン・ルージュ』の感想をお聞きしたいと思います。その前に、マリリンさん、きょうはお誕生日おめでとうございます」

マリリン(以下M)「どうもありがとう。きょうは素敵な映画を観て、こうして3人でおいしい食事もできて、すごく幸せ!」

ボー(以下B)「ぼくからも、誕生日おめでとう。これからもよろしくお願いします」

M「こちらこそ、よろしくお願いします」

N「映画はいかがでしたか?」

M「とっても素晴らしかった! 楽しくて、哀しくて」

B「ぼくはもう何度も観てるけど、君は都合がつかなくて観てなかったんだよね。君が以前に映画で歌った『ダイヤモンドは女の子のサイコーのおともだち』をニコールさんが歌ったけど、どうだった?」

M「うれしかった! ニコールさんが演じるサティーンの登場シーンだもの。ああ、こんなにいい場面で歌ってくれたんだって思ったわ。歌も上手だったし」

N「あ、ありがとうございます。気にいっていただけて感激ですう」

B「偉大な映画女優の君へのオマージュ、つまり敬意が込められてるよね。この映画では、愛もお金しだいよ、と宣言してる、高級娼婦であるサティーンにふさわしい曲だということもあるけど」

M「『紳士は金髪がお好き』での『ダイヤモンド〜』の振り付けを、ビデオクリップでマネしてた、マドンナの『マテリアル・ガール』がちょっとだけ歌われてたのも、おかしかったわね」

B「うん。あれは歌詞の意味もぴったり合うし、マドンナへのオマージュでもあるし、それに加えて、いま君が言ったこともある。上手いよ」

M「クリスチャンが歌い出すと、ふたりは象の部屋から夢の世界へと飛び出しちゃう。サティーンは一発でfall in love(恋に落ちる)よね。このあたり、最高だわ」

B「でも相手がビンボー作家だと分かると、音楽までズッコケる」

M「そこ、笑えた。離れている2人がお互いを意識する場面の歌、“Someday I'll Fly Away”は、いい歌だった。サティーンの心情が痛いほど伝わってくる。ねえ、ニコールさん、CDシングル出したらいいのに。ヒットチャートにのるわよ」

N「え、そ、そうですか。惜しいことしたかなあ、あたしったら…」

B「ぼくも大好きな曲ですよ。その後に続くメドレーも、知ってる曲ばかりで楽しいし、男同士の『ライク・ア・ヴァージン』のかけあいも傑作だった」

M「セリフの段階から、もう、歌詞に入ってる。ここですでに、来る来る、ってワクワクしちゃう。公爵ったら、最後はドラキュラ伯爵みたいで…」

B「曲の途中で一瞬サティーンの悲劇をはさむよね。そのへんの、表面にあるものと、そのウラに潜むものの見せ方というのかな、そこを忘れない」

M「そうすると、ひきしまるのね。いい曲はたくさんあるけど、でも私はやっぱり“Come What May”が好き。ふたりの愛の歌だもの。オリジナル曲でしょう。ふたりだけの曲なのよ」

B「シンプルな歌詞だからこそ、深く、心にしみいる。クライマックスでサティーンが歌詞を少しだけ変えて歌ったよね。ぼくはもう、あの言葉だけで、じゅうぶんだなあ」

M「クリスチャンもそう。心に疑いがあったとしても、あの歌の前では、ふたりは『何があっても』(come what may)お互いを信じるの」

B「最後の舞台のシーンは、どうなるのか、もうハラハラだね」

M「感動シーンの次は悲劇のシーンになる。その切り替わりも素晴らしいわ」

B「ユアンの嘆きっぷりは、すごいね。いきなりあの場で、すべてを受けとめるわけだよ。信じられない思いが、やがて心の底から振り絞るような哀しみに変わる。あのシーンがもっと続いていたら、ぼくはきっと耐えられずに一緒に号泣してると思う」

M「クリスチャンがふたりの物語を書くことが、サティーンの生きた証になり、ふたりの愛を永遠のものにして、クリスチャンがその先の人生に旅立っていく力になるのね。哀しみを乗り越えたときの力は強いものだから。ほんとに、いい映画だったわ、ニコールさん。これからもがんばってね!」

N「ありがとうございます! マリリンさんに負けないようにがんばります!」


※2002年6月1日、ロートレックの絵とサティの音楽に彩られたフレンチレストランにて。なお、この対談はフィクションです。実在の人物らしく思えても、ひとっつも関係ありません。


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