矢澤の家具の特徴
大カップボード
洋の感性、和の伝統、独自の技法
修業をした地、フランスの田舎の素朴な家具の影響を受け、無垢材の質感を大切にした作風です。また日本古来の指物技法の美を現代に継承し、そこに独自に開発した指物技法、デザインなどを加味させようとしています。矢澤は日本での家具製作にあたり、同業者等の外界との交流が断絶した宮崎の隠れ里に工房を持つことで、必然的に多くの独自の技法を開発する事になりました。鎖国が文化を育むように、矢澤も同様な環境で世界の木工家が驚嘆する独自の指物技法を育んだと言えます。
見せる組み手
日本の伝統木工では組み手を隠すことを最上としますが、あえて組み手を表に見せることで、構造的な強度を得るとともに視覚的な美しさや力強さを表します。組み手を見せる、という考えは30年来、矢澤の一貫した思想ですが、アメリカの木工雑誌(FWW)が取り上げたことで、最近になって世界的に知られるようになりました。現在矢澤の開発した技法が世界中の多くの木工家に影響を与え、矢澤の技法による作品作りが行われるようになってきました。
鷹の爪チェスト
ヤリガンナ
表面削り
日本古来のヤリカンナ:槍鉋(元々は別の漢字ですが、外観的特徴から分かりやすく槍鉋と書いています。海外にもSpear Planeと説明しています)や、特殊な鉋による矢澤が開発した独特な表面凸凹削りは自然な手触りと味わいを醸し出し矢澤の家具作品の大きな特徴となっています。近年矢澤の技法をまねる工房が増えましたが、微妙なところで品が無く、似て非なる物が増えていることを残念に思います。 尚、本来「槍鉋」はチョウナ掛けの凸凹を平滑にするため、繊維方向に沿って順目に削るものですが、家の中で使う家具の表面は必ずしも真っ平らである必要はないと言う発想から、使用上支障のない範囲で家具の表面に僅かな凸凹を付けています。この凸凹削りにより漆の吸い込みに不規則な変化が生まれ、表情豊かな表面になります。
無垢材
桧(ひのき)、楢(なら)などの無垢材のみを使用し、補修が難しく質感も乏しい合板は一切使用しません。例えば無垢材を使用と言っていながら箪笥等の背板を合板で作る人がいますが、合板は無垢材とは言えないでしょう。万一大きな台風で家具が水に浸かった場合、背板の合板は簡単に剥がれてしまうでしょう。その後の修理は大変やっかいなことになります。背板といえども無垢材にこだわることは、数百年間の使用に耐えられることを願う私の家具作りのこだわりです。
木材
内朱円卓
天然塗料
全て本漆による「拭き漆」仕上げです。木の呼吸を止めてしまい、また健康や環境に悪影響を及ぼす化学塗料は一切用いず、使い込むほどに味わいが増し、熱にも薬品にも強い天然本漆を何度も拭きこんで仕上げます。
自作鉄・銅金具
鉄金具は自家製で、鍛造後に矢澤が開発した独特な「漆焼き付け」仕上げです。銅金具も削り出しから仕上げまで矢澤独自の手作りです。
金具
矢澤の家具の特徴に関する
よくある質問 Q&A
Q指物(さしもの)工房矢澤という工房名をつけていますが、指物と言う言葉は、一般にはあまりなじみがありません。指物って何ですか?
A.よく、「ゆびもの」とか、「しぶつ」とか、読み間違えますが簡単に言うと、板と板をしっかり組み合わせて丈夫な家具を作る仕事のことです。指物、の指しとは物差し、と言う意味です。物差しで測りながら作る仕事、ということです。
「恋人つなぎ」というのをご存じですか?恋人同士がデイトするときに、指と指を絡ませて手をつなぐ方法ですね。恋人同志がしっかり繋がっていたいという気持ちの表れです。指物も同じで、板と板をしっかりつなぎたいということから生まれました。この恋人つなぎと指物技術は共通性があるんですね。
Q.漆仕上げを特徴としているということですが、白いワッカがテーブルに出来たりすることがありますか?
A. 戦後物資が不足していた頃作られた家具には、外国からは行って来た「シェラック」という耐熱性のない塗料が使われました。この塗料が塗られた上に湯飲みを置くと白い輪ができます。漆はというと、例えば漆塗りのお椀などは熱湯に強いように、熱いものを直接乗せても白い輪が出来る心配は全くありません。
Q.では漆塗りの家具はずーっと丈夫で、お手入れの必要がないのですか?
A.椅子や箪笥や飾り棚などは埃がたまったら乾拭きする程度でいいですね。頑固な汚れの時は水拭きをして下さってもかまいません。メンテナンスが必要な場合というと、窓際に置かれた家具、例えばダイニングテーブルなどでしょうか。漆は熱や薬品には非常に強いのですが、唯一の弱点として、人の肌と同じで紫外線に弱いのです。直射日光に長期間当たると表面が劣化します。その上、食前、食後毎日水拭きされると漆が次第に摩耗していきます。漆が完全に摩耗してしまった場合には、工房で拭き漆をやり直すと新品に戻りますが、そうなる前に、少し艶が無くなったなと思ったら、ご自宅で矢澤特製のオイルを塗っていただけますと、漆の塗膜が保護されて、窓際にあっても良い状態を長く保つことができると思います。
具体的なメンテナンスについては、「矢澤の家具の補修を承ります」をご覧下さい。
Q.家具の仕上げの特徴のひとつとして槍鉋仕上げがありますが、ヤリガンナって何ですか?
A.槍鉋は正倉院に残っていますので、かなり古い道具です。現在使われている普通の鉋は600年くらい前に中国から伝わった物です。それ以前は鉋といえば槍鉋しかなかったのです。最近では宮大工さんも槍鉋を使い始めました。槍鉋は元々表面を平らにすることが目的ですが、いくら平らに削ろうとしてもある程度の凸凹ができます。その微妙な凸凹が面白い表情を醸し出すんですね。手で触ったときも微妙な削り跡が感じられます。
Q.では、平らな仕上げと槍鉋の凸凹削りとはどちらがいいのですか?
A.これは好みの問題ですが、格調とか端正さを求めるなら平ら仕上げ、遊び心を楽しむなら凸凹削り、となるでしょうか・・・・ご自分の直感で選ばれたらよいと思います。
Q.矢澤の家具に「一生保証」って大変な保証をしていますがそれはどういうことですか?
A.一生故障が起きない、と保証をしているのではありません。生きている木のことですから、故障が起きることも考えられますが、無垢材で作った物はどのようにも修理が出来ますので、私が元気な内は故障は無料で直しますとお約束しています。