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 18世紀後半から19世紀前半にかけてのイギリスでは、パターン・ブックと呼ばれる建築作品集が数多く出版されました。書物に掲載されたデザインは、まさにパターンとして容易にコピーが可能でした。中でも、住宅建築に関するパターン・ブックは、建築家たちにより数多く出版されました。
 彼らのデザインは、「経済的で実用的」なものから、「ある程度財をなした人々のため」のものまで、広い層に対応したものでした。ゴシック風、古典風、スイスコテージ風・・・と、あらゆる様式が利用されました。様式の使い方は、装飾的す。同じ建物に異なった装飾を個人の好みによって、着せ替えることができるのです。
 ピクチャレスク趣味の実現というのは、これらの書物における共通の謳い文句です。ピクチャレスクの実現の仕方は、建築家によって異なっています。例えば、ある人は、建物配置を考え、ある人は、周辺の雰囲気を大切にするといった具合です。

私のコレクションの中から色彩の美しい2冊のパターン・ブックを紹介します。


Malton, James

An Essay on British Cottage Architecture, London, Hookham and Carpenter, 1798
21 color-printed aquatint plates, 280x330mm


Maltonジェームス・モールトン( -1803)は、建物のデザインや、配置による不規則性や偶然性などによる変化がピクチャレスクを生み出すことを、早くから提唱した建築家です。その考え方は、「偶然に生み出された効果を永続させる試み」( An Attempt to perpetuate on Principle, that peculiar mode of Building, which was originally the effect of Chance.)というこの本の副題によく表されています。彼は住宅の外観に一見同様な形態を与えながらも、窓や、ポーチのデザイン等の変化や、多様な材料を使うことなどによってピクチャレスクな効果を生み出すことを考えました。
通常、この本の図版は、単色のアクアチントにより刷られていますが、私が所有するこの版では、複数の色彩を使った多色アクアチント刷りとなっています。

Lugar, R 
Architectural Sketches for Cottages, Rural Dwellings, and Villas, London, T.Bensley, 1805
38 aquatint plates (22 hand-colored), 250x315mm

Lugarロバート・ルガー(c.1773-1855)は、城郭風ゴシックデザインをスコットランドに持ち込み成功した建築家です。4冊のパターン・ブックを出版しています。この本では、廃墟をともなうコテージや、インド風ヴィラなど、ちょっと風変わりなスタイル(fancy style)を提案しています。
美しい図版は、手彩色を施されたアクアチントによるものです。(上のモールトンの図版は、多色刷りですので、手彩色による着色とは異なります。)

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