新海誠を巡る旅(2005/4/9) 「ぶらり埼京線の旅」でも目的地は高崎


 席数38席のミニシアターとはいえ、年をまたいでのロングラン上映が行われたライズX。

 『雲のむこう、約束の場所』の最終上映の日。舞台挨拶に登場した彼は、そんな言葉を口にしたと、人づてに聞いた。

 始まりがあれば、終わりは必ずやってくる。

 その日々が楽しいものであればこそ、つい眼をそらしてしまいがちだけれども、終わりはやっぱりやってくるのである。
 もちろん、それは次の世界への出発を意味してもいるのだけれど・・・。

 4月9日、僕ももまた最後の日を迎えようとしていた。
 2004年11月19日に渋谷・シネマライズから始まった『「雲のむこう、約束の場所』に劇場上映に伴う舞台挨拶のイベントも、今日の高崎でが最後のになるだろう。
 
(おそらくはトリウッドの最終上映日にも「何か」はあると思うけれど・・・、あそこは、ほんとうに「特別な場所」だから) 
 
 11月のあの日から、週末の度に映画館へ出かける日々が続いた。
 時には映画の鑑賞だけではなく、舞台挨拶を見るために友人達と名古屋、宇都宮の劇場まで出かけた。
 DVD発売後には各ショップ主催で行われる発売記念イベントに参加するために、何本もDVDとサントラCDを購入した。
 

 遅い春と思われていた陽気も、2日程前から突然初夏の様相をみせはじめ昨日の上野公園は酔っ払いであふれかえっていたらしい。
 高崎の桜も丁度今日辺りが見ごろらしく、僕もいつものメンバーと高崎で落ち合って イベントに参加する前に花見に行く予定を組んでいた。

 集合場所はJR高崎駅。
 けれど、僕は集合時間の3時間以上も前に自宅を出た。
 高崎へ行く途中、3ヶ所ほど写真を撮るためにだ。

 一部の本などでは「巡礼」と呼ばれているようだが、要は物語中に登場する場所のモデルとなった(と思われる)場所をたずねる行為。
 その場所に行って別に祈るわけでも、物語の登場人物になりきるわけでもない。

 僕は単純にその場所でデジタルカメラに風景を納めるだけ。

 そんな行為を、何回となく続けてきた。
 あるときは、神戸。
 あるときは、北海道。
 日帰りで青森に行ったこともあった。
 
 「終わることのない」行為の延長線上にあるライフワークのひとつ。
 
 興味のない人間にとっては単なる風景を納めるだけの行為は、どちらかといえば
 『巡礼』というよりは感覚的に『オリエンテーリング』に近い。


 大崎駅から埼京線の大宮行き普通列車に乗り込んだ僕は、池袋駅の手前でデジカメを構え窓の外を流れていく風景を凝視していた。

 「雲のむこう、約束の場所」コンプリートブックP52の資料写真に写っていた立体駐車場。

 映画の中でヒロキが高校時代を過ごす街。
 晴れた日には、このビルの奥はるか先に、ユニオンの塔を見ることが出来たという。
 塔の見えない街を目指して進学した東京で、それでも塔の影から逃れることは出来なかったヒロキ。
 それでも、故郷に戻るでもなく、更に塔の見えなくなる別の土地へ移ることもせず、3年間をこの街で過ごす。
 
 彼が見ていたのは本当に塔のある風景だったのか?
 塔の方向にある故郷、少年時代の郷愁から完全に離れることも出来ず、その地のとどまることも出来ず、ただ眺めるだけの距離に自身の存在を漂わせることで、
 無意識のうちに「過去という時間」「故郷という場所」とのつながりを欲していたのかもしれない。

 列車に乗っていると実際にはあっという間に過ぎていってしまう風景だが、そのうち炉穂で散策をしてみたいと思っている。

 そして武蔵浦和駅に降り立った。

 駅ビルの2階にある本屋。
 時間的に開店前だったため店内には入れませんでしたが、サユリとタクヤが出会った本屋のモデルになったお店です。
 写真はちょうど、タクヤの視点でサユリを見つけたときのアングルになると思われます。

 まだDVDが発売になる前、タクヤの持っている本の題名がわからずに必死になって目をこらし確認しようとしました。
 結局は実在しない架空の本であることを知ったのはDVD発売の後だった。
 本の題名は『量子重力論』
 作者名は字体が異なりますが、実際に量子学関連の著作のある人の名前でしたね。

 ちなみに、この時サユリが手に取っている本は『まどろむ夜のUFO』角田光代 と思われる。

 そして、大宮駅のホーム。

 大宮駅といっても当然広いし、ホームも沢山あります。
 何度も、ホームの番線を変えアングルを考えているうちに集合時間ギリギリの時間になってしまい、時間切れ。
 後になって確認してみたところ、どうやら正解は高崎線のホームだったようです。
 またの機会にリベンジをせねば・・・。


 そんな寄り道をしながら、高崎駅へついたのは午前11時。
 いつものメンバーと合流後、高崎観音で花見をしたり、温泉に入ったりしながら入場整理券の配布がはじまるまで時間を過ごした。

 どうやら、天門さんや、丹治さん、田澤さんも参加されるとのアナウンスがされたのはHPだけだったようです。

 整理券の配布が行われた時には37人ほどの人が並んでいました。
 席数58と聞いていたので、わりと余裕かと思っていたのですが、18時の上映の際には立ち見も出る盛況ぶりで、入りきれず20時の回に
まわった人もいたそうです。
 (ただ、20時の回も、舞台挨拶とサイン会が行われたとの事です)

 おそらくは4人が「雲のむこう、約束の場」関連イベントで顔をそろえるのは最後と思われるその場所にいられた幸福をかみしめつつ、舞台挨拶とサイン会へ。






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