ミカエル音楽雑記帳その参







ここは私の音楽鑑賞記その参です。
音楽を言葉で表現することは難しいので、多分に抽象的な表現になっているかもしれません。
参考までにジャケット写真と私が入手した(番号/国)をのせておきますが、
入手困難のものもあるかもしれません。また、文字化け防止のため原文とは違う表記の場合もあります、ご了承を。
御意見等は こちらまで

ジャケット写真 アーティスト/タイトル コメント
Mau Mau

SAUTA RABEL
(077778102526/ITALIY)
怪しい地中海風大道芸人
なんだかよく判らないジャケットで、名前からアフリカのバンドだと思ったのですが、イタリア製とはどういうことだろうとの疑問は一曲目で解けました。イタリアのバンドでまたこれが嬉しいくらいのかっこよさ。地中海北部の民謡的要素に加え、レゲエ、ロック、ファンクその他諸々の要素をちりばめた曲は無節操なミクスチャー感覚がスピード感を持っています。何となく怪しい匂いのする感じやチンピラっぽい感じもあり、それが得も知れぬかっこよさになっています。平凡な日常の生活につまらなさを感じている人にもお勧め。
William Bootsy Collins

THE ONE GIVETH
(WPCP-3683/JAPON)
怪しい凄腕ベーシスト
これもなんだかよく判らないジャケットです。2本のカスタムモデルベース(星の形をしてゐる!)と写真に納まる本人は王子様の格好で困ったもんですが、リズムは抜群でさすがにキャリアと実力を感じさせます。イスラム圏やアフリカなどの音楽とくらべると都会的で洗練された感触を感じますが、冗談と本気の境目がわかりにくいところなんかは他の追随を許さないスタイルです。あのベースはちゃんとした音が出るのかなどと思っていたら、ライブを観たという人によればちゃんと弾いていたそうで、また埋め込まれたLEDが光っていたそうです。KISSのGene Simmonsの斧ベースに匹敵する(意識してるかもしれない)星ベースは、Bootsy Collins Modelとして日本で生産・販売されたこともあるらしく、限定数は早期に完売したとのことです。ほしい。
Fela Kuti

AFROBEAT
(MPG 74024/PORTUGAL)
ファンク政治犯
わたしがこのアルバムを聴いたのは確かもう7年も前で、最初はなんだか呪文を唱えるような歌が延々と続く印象を受けました。だがしかし、それから1年程経ってふと思い出して聞いてみると、まるで始めて聞いたような感じで、今まで聴いたことのない種類のファンクに出会った感動を覚えました。多分聴き手によって好き嫌いのはっきり別れる音楽ですが、好きな人には堪えられないでしょう。なぜ政治犯なのかはわかりませんが、音楽を聴く限りでは、どちらかといえば宗教犯のような感じです。
Khaled

HAFLA
(539 881-2/GERMANY)
感動のライブ
フランスへ渡りダンスミュージックとの融合し、イスラム音楽の中でも最もポピュラーになったRAIですが、その普及に大きく貢献したKhaledのヨーロッパツアーのライブアルバム。バックをつとめるメンバーも手練で、Khaledの音楽も鮮度を保ちつつ円熟したものになっています。声の臨場感というのでしょうか、このアルバムを聴いているとなんだか会場の空気みたいなものが伝わってきて、この会場に居合わせた人がとてもうらやましく思えます。聴く度に感動が増す名ライブです。
Omunibus

GREAT JEWISH MUSIC
SERGE GAINSBOURG
(TZ7116/USA)
これは一体どういうことだろう
偉大なユダヤ人の音楽シリーズでBurt Bacharachなどと並んで出たSerge Gainsbourgのオムニバスアルバム。John Zornが指揮をとって製作されたようですが、Mike Patton,John Zorn,Ikue Moriなど、そうそうたる面々で独自の解釈にもとづいていたり、単純なカバーをしていたり様々な演奏が聴けます。なかでもCibo Mattoの"Je T'aime Moi Non Plus"はJohn Lennonの息子Seanが参加していたりして、なんだか因縁めいたりしています。オリジナルがいかに柔軟性のあるものだったかを知る意味でもSGファンなら一聴の価値があります。しかし、参加アーティストを見る度にこれは一体どういうことだろうと思うのは私だけでしょうか。
Les negresses Vertes

FAMILLE NOMBREUSE
(TOCP-6986/JAPON)
プロレタリアート過激派サーカス
最近(と言ってももうだいぶ前か?)はJane Barkinのアルバムに参加するなどフランスでは超メジャーなグループですが、メジャーになるかならないかのこのくらいのアルバムは、過激派がバイトするサーカスのようで、辛辣な歌詞とパンク的なアプローチが炸裂しています。演奏の手腕が確かで、アコースティックな楽器を多く用いているので、表面的には穏やかなものもありますが、内容的にはかなりきわどいものになっています。直接に体制批判をするのでなく、現実的な描写の中に織りまぜて表現する手法は、ランボーの故郷の子供たちといった感じを受けます。そろそろ朔太郎の子供たちも目醒めて欲しいところです。
Stevie Wonder

INNERVISIONS
(3746303262/USA)
いろいろなシンセの使い方
私がシンセサイザーという楽器の可能性を実感したのは、Kraftwerkでも冨田勲でもPink Floydでもなく、ABBAとこのStevie Wonderでした。ABBAの場合はフォークギターをシンセに持ち替え、SWの場合はすべての楽器をシュミレートした上で、今までにない表現をした功績は以後の音楽に多大な影響を及ぼしたと思います。ここではとても個人的な音楽観が、箱庭のようにこじんまりと展開されていて、時にクールに時に暖かく音楽を楽しめるものになっています。ソウルミュージックが一つの円熟期を迎えた時期に、それらを内省的に表現するために、あえてシンセサイザーを多用したのではないでしょうか。寒い冬枯れの風景に好く合う音になっています。
Me'Shell Ndegéocello

PEACE BEYOND PASSION
(9362-46033-2/USA)
類い稀なる才能
MadonnaのバンドやThe Rolling Stonesへの参加で一躍有名になった彼女ですが、やはりソロ名義の作品がたまりません。腕のいいベーシストであることもそうですが、常に新しいアプローチを展開しているMadonnaがとても評価しているだけあって、どこにもありそうでどこにもない、新しい音楽の切り口を心得てる人だと思います。超絶技巧を期待する人にはおすすめしませんが、Stingや川端民夫のようなしっかりとしたグルーブのベースラインが好きな人には、きっと気に入ってもらえるベーシストだと思います。また、アルバム全体の構成と楽曲もよく、私にはなぜベストセラーにならないのか不思議に思えます。
Ian Dury

NEW BOOTS AND PANTIES!!
(REP 4546-WY/UK)
マイノリティーの逆襲
ポリオの後遺症で足に障害を持っているのにもかかわらず、健常者にも及びもつかないような不道徳な曲をパワフルに展開しています。ロックありファンクありで、バックのメンバーはバラエティー豊かな演奏を展開し、Ian Duryはひたすらお下劣なうたを歌い続けます。連合王国は古くからチャリティーの精神があって、ほとんどの医療費が無料だったり、最近では地域通貨やコミュニティービジネスなど連合王国発信の発想が日本にも入ってきていますが、Ian Dury and Blockheads(直訳でバカ者の意)は福祉のシステムとは無関係に文句なくかっこいい音楽をやっていてます。密かに尊敬していたので、近年亡くなったのは非常に残念です。
Pierre Barouh

VIKING BANK
(PSCY-1004/JAP)
架空の映画
一曲ごとに短編映画を観ているような感じがします。「男と女」や「白い恋人たち」の製作に参加していたからだけではなく、まあ、それらの影響もあるのでしょうが、映像的な音楽だから映画にマッチしたのだと思います。ブラジル音楽とフランス音楽の蜜月を経て、多様な音楽性と詩的表現が曲に見事にちりばめられていて、休日にぼんやり聴くのもよし、忙しい合間に気分転換に聴くのもよし、もちろんじっくり腰を据えて聴くのもいいものです。初夏から夏にかけての季節に、春の名残りを懐かしんでいたいような時間なら、ぴったりと合いそうな抒情的な作品です。私もそのくらいの季節には必ず聴きます。
KISS

DESTROYER
(314 532 378-2/USA)
地獄のバラエティーショー
ロック・ポップスのつぼを見事に抑えたつくりで、おちゃらけた風貌とは裏腹に非常に真面目に音楽を製作しているバンドです。私がはじめてこれを聴いたのは高校生の頃で、なぜか友人宅でレタスを食べながら、その後結成する変則編成のテクノポップバンドについて話していた時でした。車が衝突する音など効果音の使い方や、クラシックのフレーズをギターのリフに使うところなど、変な格好だけが売りののハードロックバンドという固執した見方がアルバム一枚で消し飛んでしまいました。プロディースのBob Ezrinはこの前にPeter Gabriel、この後にPink Floydの"Wall"などを手掛けている人で、その音楽の表現を活かす手腕はさすがです。しかし、イスラエル人のGeneは悪魔の格好してるけど大丈夫なんでしょうか。家族や親戚にどうやって弁解しているのだろう?仕事だからしょうがないとか言っているのでしょうか。
呂秀齢

冷弦多情
(74321532362/TAIWAN)
春の夜の霧煙る情景
私は春になるといろいろな音楽を聴きたくなるのですが、その中で外す事ができないのが中国音楽で、なんだか春になると中国の音楽がどこからか聴こえてきそうな気さえします。呂秀齢の琵琶の音色はそんな春の景色にとてもぴったりで、伴奏のシンセサイザーを中心にしたアンサンブルも、抑揚のある表現で感情を静かに揺さぶります。暖かい夜にちょっと靄がかかったような空を見上げたり、昼下がりに感傷的に思い出に耽ったり、物憂気な気分のお伴に最適です。また、とてもシンプルな構成なので、琵琶の音色に馴染みのない人にもおすすめです。
Simply Red

LIFE
(0630-12069-2/UK)
かっこよさ満載
不思議な声です。のびのあるわけでもないのによく通る声で、どこか影のある表情をもっている声。天賦の才能というのはいろいろあるけれど、Mick Hucknallの声はまるで楽器のように表現できる才能だと思います。私の周りでは女性に不評な反面、男性に支持者が多く、その理由は単純に「かっこいい」「センスがいい」などで、私も大体同意見です。このアルバムでは曲もいいのですが、なんとリズムセクションにSly & Robbie,Bootsy Collinsなどのゲストが参加しています。電車の中なんかで聴いたら、窓の景色が違って見えそうな気がしてくる音楽で、このアルバムでは多彩なリズムやメロディーを取り入れて、表現の幅も非常に広いものになっています。
Robert Wyatt

SHLEEP
(HNCD1418/FRANCE)
やわらかい機械のその後
前述のMick Hucknall同様この人の声も不思議な伸びのある声です。U2以降もう儲からない仕事はしないと思っていたBrian Enoの参加があったり、Paul Wellerの参加などもありますが、特筆すべきはSaxophoneで参加のEvan Parkerで、久し振りに聴く彼の音色はもう格別で、Robert Wyattの声との絡みはたまりません。なにか嫌なことがあっても、このアルバムを聴くとなんだかリフレッシュできそうな気がします。明るい曲が多いわけでもなく、どちらかといえば暗い曲調が多いのですが、不思議と元気付けられます。ふわふわとした気分になれますよ。
Teenage Funclub

SONGS FROM NORTHERN BRITAIN
(488209 2 CRECD196/UK)
新叙情派ポップバンド
なんとも好いノリと程よくキャッチーなメロディーを持つバンドです。電気的なサウンドでありながらアコースティックな表情もあるところなど、Sea and Cakeなどのシカゴ音響派のバンドに通じるところもあります。最初はこのバンド名からパンクっぽいのかと思っていましたが、いい意味で肩透かしを食わされました。たぶんNeil Youngあたりが好きな人にも受けそうな感じでもありますが、聴く度にとてもモダンな感じを受けます。天気にいい日に、小型の乗用車で田舎町をのんびりドライブしているような気分になります。
Billie Holiday

THE GREATEST INTERPRETATION OF
BILLIE HOLIDAY
(KICJ 8001/JAP)
天使のうたごゑ
高校生の頃、ラジオの深夜番組を聞いていて、ふと流れたのが彼女の歌声でした。曲は憶えていません。ただ私は「なんて可愛らしい声なんだ!もういちど聴きたい」と感じました。曲のあとのクレジットでビリー・ホリデイとシンガーの名前が告げられたので、翌日学校帰りにレコード店でその名を告げてレコードを買いました。その時の財布の中身はちょうど3,000円。500円のおつりをもらって、家に帰りレコード針を落とした瞬間、周りの空気が一変したことを憶えています。前日に聴いた曲が何かなんて問題じゃありません。彼女の声、声のあいだに聞こえる息継ぎ、何かを落としたようなノイズ。まるで母親の腕の中でやさしく包まれているような安堵感と得も知れぬ緊張感の共存。
彼女の生い立ちとかその背後関係とか、その後いろいろな情報を得ましたが、今さらそんことはどうでもいいことかもしれません。彼女の声の魅力、なぜ彼女の声があんなに可愛いのか、その答えは全くわかりませんし、たぶんこれからもわからないでしょう。米国のみならず世界のシンガーの中でも彼女のような魅力を持った人はそうそう居ませんし、他のだれかとくらべるなんてのも野暮で、さらにジャズという狭いカテゴリーの中で論じるなんて勿体無いことです。人種や宗教、文化の違いをぶっ飛ばしていますから、すべての音楽の愛好者に一度は聴いてほしい人です。しかしただひとつ困ったことがありました。その後私がジャズを演奏するようになった時、彼女のフェイクする歌声の影響でオリジナルがわからなくなってしまいました。でも、ジャズなんてなんか難しそう、なんて思っている人にもお勧めします。
Caravan

CARAVAN & THE NEW SYMPHONIA
(8829692/UK)
ポップスとクラシックの緩やかな邂逅
現時点でもう30年程前の録音です。しかし、ここで聴かれる音楽はついさっき演奏されたような臨場感と、それぞれの演奏者の緊張感がはっきりと伝わってきます。このリマスター盤にはLPには入っていなかった数曲のテイクがありますが、多分曲順通りで最初は堅くなっていた音が、終盤に近付くにつれ見事に調和していきます。Scorpionsとベルリンフィルなどをはじめ、クラシックとポップス、ロックのバンドの共演は今でこそ珍しくはないのですが、この時期では他に、Deep PurpleとかPink Floydなどくらいしか思い浮かびません。その中にあって、このアルバムのクオリティーの高さは他に類を見ないものだと思います。決して凄いインタープレイがあるわけでもなく、共演用に新しい曲を作ったわけでもありませんが、合奏する楽しみとお互いの方法論を超えている所などは、ジャンルに関係なく様々なミュージシャンのお手本となるものだと思います。また、それぞれの奏者のバランス感覚のよさは白眉のものです。明日なにかいいことがありそうな気分になる一枚です。
Brian Eno

ANOTHER GREEN WORLD
( VJCP-23194/JAP)
インドアお伽噺
Brian Enoと言えば、今ではU2などを手掛けた名プロデューサーとして知られていますが、その昔は楽器ができないのにRoxy Musicに入っていたりしたミュージシャンでした。Roxy脱退後はキテレツなポップをやっていたのですが、その後は環境音楽の作曲家として数々のアルバムを発表します。このアルバムはその過渡期的な時期に出されたもので、シンプルで心地よいような、気味が悪いような、微妙は音づくりがなされています。それはまるでビオトープの中を小人になって探検しているようでもあるし、それを拡大鏡で観察しているようでもあります。以前に読んだ彼のインタビューでは、70パーセントの普遍性と、30パーセント前衛性がプロデュースのコツだというようなことを言っていましたが、このアルバムで聴かれる音は、まさにその言葉通りの音です。夏の暑い日に、クーラーの効いた部屋でお伽噺を聞いているような気分が味わえます。
The Specials

THE SPECIALS
(DIDX-1537/USA)
強力元気活性剤
1970年代、パンクの嵐が少し緩やかになった頃、ロンドンでは次なるムーブメントとしてSKAが注目されはじめていました。パンクをリアルタイムで聞いて、ロックとはパンクであると単純な認識をしていた私は、このレゲエとパンクの混じったスピード感にはまってしまいました。まあ、SKAはレゲエよりも前からあった音楽だと知ったのはそれから後でしたが、現在でもSKAのバンドは数々あって、中にはいいなあと思うものもあるのですが、このThe Specials以上にかっこいいのには出会っていません。最近では同時期に活躍したMadnessが再結成されたり、店頭でThe Selector(このバンドもかっこいい)の再発アルバムを見かけます。なんとなく元気が出ないなぁという時にはとてもよく効きます。プロデュースはなぜかElvis Costelloです。
Gong

CAMEMVBERT ELECTRIQUE
(VICP-61171JAP)
テクノトランスプログレ
空飛ぶティーポットに乗った元祖変なおじさん、Deavid Allen率いるGongの初期の傑作です。SUN RA亡きあと(宇宙に帰ったとも言う)、おかしな宇宙感を持ったミュージシャンとして貴重な存在となりつつありますが、SUN RAのように素性を隠してはおらず、つい最近までは故郷のオーストラリアで隠居生活をしていたようです。テクノトランス系に人気が出た最近では、ついに来日まで果たし、会場を若いクラバーと中年プログレファンで一杯にしたようです。何か自分がいやになった時、ついおかしな行動に出てしまう人がいますが、そんな時にはこのアルバムを聴いたら、自分の凡庸さを認識でき、やはり自分は普通なのだと納得できます。しかし中途半端に変人を気取っている人は要注意。もっと自分がいやになります。また、眠る前に聴いてはいけません。眠れなくなります。全体を覆う独特のグルーブ感は非常に強烈です。
YES

TIME AND A WORD
(AMCY-6281/JAP)
涼し気な山の風景
とっても大袈裟な音楽性で有名なバンドですが、この頃の音楽性はポストサイケ、ポストアートロックといった感じで、比較的淡白な表情を持つ楽曲が多くなっています。この頃の流行なのかもしれませんが、オーケストラによる装飾的な伴奏が加えられています。ギターの音がとても特徴的なタイトル曲などは、米国西海岸のバンドのような風情もありますが、やはり、プログレッシブ・ロックのバンドで「重さ」や「暗さ」も垣間見せています。重いながらも、梅雨の時期から盛夏にかけて、暑苦しい時期には独特の涼しさが味わえます。でも、レゲエやハワイアンみたいに海水浴には合いません。山の涼しさと言った感触の音です。このバンドのその後の音はやはり涼し気(寒い?)山の風景を思い起こさせます。
Liane Foly

LUMIÈRES!
(VIRGIN 840055-2/FRANCE>
フランス女性の肝っ玉炸裂
Liane Folyのベスト盤的なライブアルバムです。スタジオ録音に比べるとラフな感じはしますが、その分ヴィヴィットな演奏が繰り広げられます。バックバンドについてはあまり知らないのですが、演奏技術は素晴らしく上手くて、フランスの芸術的な懐の深さを感じます。ギターや鍵盤は当然のように難易度の高いフレーズを奏で、リズムセクションはヨーロッパのリズムにラテンアメリカやファンク、アフリカ的な要素をふんだんに取り入れて、非常にバリエーション豊かな演奏となっています。夜の静寂にラジオから流れるような曲といい、また、胆の据わったボーカルといい、ヨーロッパの一流の凄さを感じる内容となっています。最後のMistyはご愛嬌ですが、オリジナル曲の完成度の高さは言葉に表せません。Original Loveあたりの曲が好きな人にもお勧めです。聴いた後に斜に構えそうになります。
Steve Hillage

FISH RISING
(0777 7 87277 2 9/UK)
魚が来たりてギター弾く
水ぽっい感触でありながら、浮遊感溢れる音空間を形成しているアルバムです。映画・小説の「魚が出て来た日」とは内容的にあまり共通するものはありませんが、フィーリング的にはかなり共通するものがあります。 水に因んだ音楽と言えば武満徹氏の「ウォータースケープ」が知られていますが、私の先入観からか、このアルバムを聴いた時に思ったのは「ウォータースケープ」でした。聴いた後、人の声が入っているようでないようで、きっちりした楽曲構成があるようでないようで、非常に捕らえ所のない音楽で、ここから浮遊感を感じたのかもしれません。また、Jimi Hendrixとは別のアプローチでギターの可能性を追求するべく試行錯誤していた当時のギタリストの宿命も感じます。多分、今まで聴いたことのない音空間を作ろうと頑張ったのでしょう。それは今聴いてもとても新鮮な音で、パイオニアとはひとつのスタンダードを作るミッションを果たすものだとも感じます。冬の水族館で魚を眺めているような音楽です。

その貳へいく

その四へいく

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