ミカエル音楽雑記帳その貳







ここは私の音楽鑑賞記その貳です。
音楽を言葉で表現することは難しいので、多分に抽象的な表現になっているかもしれません。
参考までにジャケット写真と私が入手した(番号/国)をのせておきますが、
入手困難のものもあるかもしれません。また、文字化け防止のため原文とは違う表記の場合もあります、ご了承を。
御意見等は こちらまで

ジャケット写真 アーティスト/タイトル コメント
UK

NIGHT AFTER NIGHT
(VJCP-23203/JAP)
キミタチサイコダヨ!
その昔、マイナーに一世を風靡したプログレバンドの残党が結成したUK。そのUKの日本でのライブ録音に、ロス・アンジェルスで一部オーバーダビングが加えられてリリースされた作品。私は高校生時代にUKのライブを見ましたが、テリー・ボジオの派手なドラミングとエディ・ジョブソンの華麗なフレーズ、そしてジョン・ウエットンの渋く荒っぽい(自己中心的?)なプレイが相まって、トリオとは思えないパワフルなステージでした。今でも元気を出したい時に聴いてます。また、エイジアのファンにもおすすめです。
Fra Lippo Lippi

SONGS
(CDV2375/UK)
屈折した古い光
最初は北欧のジョイ・ディビジョンと言われたFLLですが、このアルバムではメロディアスで淡々とした楽曲が並びます。のちにAORの巨匠ウォルター・ベッカーのプロデュースによるアルバムを出していますが、気に入らなかったのでしょうか、ベストアルバムではセルフプロデュースによる再録音をしています(これもとてもいい感じです)。音的にはさわやかな感じを受けますが、歌詞の内容は屈折していて、悲観論に貫かれているのはむしろ爽快でさえあります。
T.J.Kirk

T.J.KIRK
(9 45885-2/USA)
ギター馬鹿一代
ギタリスト3人とドラム1人のバンド。曲はモンク、ジェームス・ブラウン、ローランド・カークのカバー。 突っ込んだリズムの勢いのある演奏ですが、前述の3人の巨匠の曲をまったく自分たちの曲のようにしていて、温故知新の精神に溢れています。エフェクトありフェイクありで、エレクトリックギターの表現力を再認識する一枚。いづれのメンバーも手練です。車にのって聴く時は要注意、スピードを出し過ぎます。
Brigitte Fontaine

GENRE HUMAIN
(724384050023/FRANCE)
ポップな前衛?
かつてアート・アンサンブル・オブ・シカゴとの共演でジャズファンにも人気が高く、前作ではマグマのメンバーを起用したりと、意外な組み合わせで新作を発表し続けてます。普通はこういう場合は分りにくくなるケースが多いのですが、この人の場合はどんどんポップになっていて、このアルバムにはComme à la Radioのリメイクが収録されてますが、前作と比べて非常にポップになっています。踊れる前衛シャンソンでアラビア系の音楽を愛好する人にもお薦めですが、とても乾いていてクールなのはパリジェンヌの気質でしょう。
Holly Cole Trio

BLAME IT ON MY YOUTH
(TOCP-7210/JAP)
ジャズ版セックス・ピストルズ
これを最初に聴いた時、シンプルな編成(ボーカル、ピアノ、ベース)でスタンダードをやっているんですが、スピード感とスリル、それに反骨精神に溢れたアナーキーな姿勢に引き込まれました。まるで初期のパンクロックのバンドが持っていたような、コマーシャリズムを利用した衝動的な自己表現を、ジャズで体現できる希有な存在であったと思います。その後のホリー・コ−ルのソロは全く聴きません(聴きたくない)が、もしロックをやっているボーカリストに何かジャズを?とたずねられたら、まず推薦したい一枚ですし、多分私も聴き続けるでしょう。「コーリング・ユー」は御愛嬌ですが、「スマイル」「君住む街角」は白眉の出来。テクニックを越えた何かを持つ作品です。
The Clash

LONDON CALLING
(ESCA 7615/JAP)
ロックだったらなんでもあり
はじめてThe Clashを聴いた時、ジャケットをみてUS-50'sっぽい感じで好きになれませんでした。なんだかGreen Dayみたいなファッション・パンクスを連想して、とてもイモ臭くかっこわるい印象を受けたのです。それ以来、敬遠してあまり自分から聴かなかったのですが、このアルバムを耳にしてその悪いイメージは吹き飛びました。様々な音楽性を取り入れながらも、決して自分達のスタイル・スタンスを崩すことなく、疾走感溢れる作品に仕上がっています。時代を越えた精神性があります。
OST
Jeanne la Pucelle

BANDE ORIGINALE DU FILM
(K 1006/FRANCE)
ジャンヌ・ダルク待望論
ヨーロッパ、特に北部フランスではジャンヌ・ダルクは永遠のヒロインで、救世主であるとともに弱き者のよき代弁者であるようです。いろいろな人の手によってたびたび映画化され、またモティーフとなっていますが、このアルバムも映画"Janne la Pucelle"のサウンドトラックです。特筆すべきはJordi SAVALLのオリジナル楽曲に加え、ルネッサンス初期の作曲家Guillaume DUFAYの曲に新解釈がなされていて、現代と古典の境目を越えた不思議な統一感があります。浮遊感のある夢のような曲がならび、物語的になっているので映画を見てなくても充分たのしめます。
Moon Riders

MANIA MANIÈRA
(PCCA-00294/JAP)
花咲く乙女よ穴を掘れ
私は実験的サウンドとか、革新的な機材とかはあまり興味がなく、すべては表現の結果であり、結果的にいいものができればいいのではないかと思います。このアルバムはそれをよく体現していて、当時としては最新の機材を用いているのですが、とてもいいバランス感覚によっているのでしょう、私にとっては新しいフォークに聞こえます。シンプルなギターの弾き語りもフォークなら、デジタル機器満載のフォークもありではないでしょうか。音の方はなんとなくノスタルジックな感じもあり、新しい感じもあり、表現の豊かさを感じます。
Grant Green

GREEN IS BEAUTIFUL
(CDP 7243 8 28265 2 1/USA)
踊るジャズメン必須アイテム
数年前クラブで流れていて思わず聞き入ってしまったのがこのアルバム。その時は"Dracula"が流れていたのですが、いままで知らなくてほんとうに損した気分になりました。これ以前のアルバムは聴いたことがあったのですが、誰がやっているのか解らなくてDJをつかまえて尋ねてしまいました。しかし、LPはもうすでに高価なプレミア物で、入手不可能になっていたところ、BLUE NOTEからCD再発で感激しました。まとわりつくようなリズム、単音中心のシンプルなギター、ホーン&ブラス・セクションのオルガンとの絡み。踊って聴けるジャズアルバムです。
Air-V

UN GRAND VOYAGE...
(3 59749 128862 0/FRANCE)
フランスの思い出
私事ですが(ここはすべて私事ですが・・・)、去年パリに行った時にTV、ラジオでよく流れていたアーティストで、これを聴くとパリの思い出が蘇ります。音の方は中世ヨーロッパ的な感覚をデジタルビートで表現していて、アフリカや中東のニュアンスも感じます。ビデオクリップで見た感じでは、ふつうのフランス青年といった感じですが、リュートなどの古楽器を使った楽曲ではその非凡な感覚が発揮されています。音楽の反復効果の気持ちよさは古典も現代も大きくかわらないのではないでしょうか。天気のいい日に縁側やベランダで聴くのに似合いそうです。
Young Marble Giants

COLOSSAL YOUTH
(TWI 984-2/Belgium)
すばらしき青春
高校生の頃、友人達とギター、ベース、シンセという変則編成(自分達はそう思っていなかったが)のバンドをやっていて、そのバンドおよびその周辺で流行っていたのがこのアルバム。また、私にとって最も理想的なボーカリストであるAlison Stattonに出会ったのもこのアルバム。ギター(たまにオルガン)、ベース、ボーカルという路上でやってそうな編成で、音もシンプルですが、昨今のよくありそうなユニットと比べると、密室的でモノクロームな感触があり、比べるのも野暮です。Alisonの声を「この世の奇跡」と言ったミュージシャンがいましたが、私も同感で、上手いボーカリストと良いボーカリストは別物ということを示す貴重な存在であると思います。
Anne Dudley

ANCIENT AND MODERN
(PCCY-00708/JAP)
古典的現代の音楽
元Art of NoiseでWham!やBoy Georgeなどの編曲を手掛けた事もあるAnne Dudleyのオリジナルアルバムで、J.S.BachのPrelude以外の全曲が彼女の作品ですが、すべて古典であると言っても疑う人の少なそうな内容です。私は阪神・淡路大震災で被災したあと、音楽を聞いてのんびりすることを忘れかけていた時に、新譜で発売されたこのアルバムを知りました。当時なんだか不眠症みたいになってしまっていて、仕事と周りとの板挟みでやりきれない気持ちだったのを抑えてくれました。毎年1月17日には必ず聴くアルバムです。
Orchestral Manouevres in the Dark

ORGANISATION
(DIDCO6/UK)
叙情派テクノ
今聴くといかにも安っぽいサウンドですが、発表当時(1980)でも充分安っぽい感じをうけました。しかし、シンセサイザーやリズムマシンを使って、彼等が織りなす音には風景があります。たとえば、冬枯れの木立をうっすらと霧が包んでいる様子や、工場(廃工場の感じか?)のまわりに遊ぶ子どもの遊ぶ情景、自転車通学をする学生の憂鬱な表情。私はこういったものを連想しました。1曲目タイトルには広島に原爆を落としたB29の機名(機長の母親の名でもあります)があったり、その他にはアナログシンセサイザーの音源ユニットがタイトルになっていたりもします。シンセサイザーの(当時の)特殊性よりも、表現をするための道具として使い込むことは、機材の値段に換えられないものだと思いますし、演奏も決して上手ではありませんが、潔さがカバーしています。
Fania All Stars

LATIN CONNECTION
(JM 595/VENEZUELA)
詳しいことはわからない
どのくらい前でしょうか、このアルバムを購入したときは、知人にサルサのよいバンドがあっておすすめだというだけで、ほかになにも知識はありませんでした。あまりコテコテのサルサって感じではないのですが、多分に濃い内容ですし、メンバーはいずれもテクニシャンで、踊れ!と言わんばかりのリズムにのせてその片鱗を垣間見せます。メンバーについてもあまり詳しいことはわかりませんが、Santanaあたりでブーガルーやサルサあたりのリズムにはまった人、ジャズからそのあたりの線へ幅をひろげたい人にはとてもおすすめです。まああまり細かいことは考えずに明るく聞きたいアルバムです。
Genesis

A TRICK OF THE TAIL
(CDSCD 4001/UK)
おとぎばなしをききましょう
Peter Gabrielというバンドを代表するメンバーが抜けて、きっと暗中模索状態だった時のアルバムですが、その後のポップ指向の礎を作った作品だと思います。John Lennonにお気に入りのバンドと紹介され、イギリスのトラッドとロック、ジャズの垣根を飛び越える音楽性で、当時は英国の国民的なバンドだったようです。 PGが抜けて制約が無くなったからでしょうか、それぞれのパートがすべて全力を振り絞った演奏で勢いがありますし、それぞれの力量を見せつけられますが、それはあくまでも表現のためにやっている必然性のもとにあります。また、アルバムのコンセプトもまるで1曲ごとにいろいろな物語を聞いているようです。その後、残念ながらギターのSteve Hackett が抜けてしまいますが、全米チャートに登場したり、Phil CollinsがEric Crapton と共演したりとご存知のとうりです。  
Bill Evans Trio

LIVE
(POCJ-1901/JAP)
部屋の空気をかえてみましょう
Bill Evansのライブはいくつかありますが、私はこの時のライブの演奏が一番すきです。インタープレイに走りすぎず、かといって考え過ぎでもなく、ある意味では淡々とした地味な演奏とも思えますが、音の持つ雰囲気はとても緊張感に満ちています。音が周りの空気をかえてしまうほどの説得力があり、出来過ぎだなあと思える程のハーモニー、リズムの展開、そして歌うフレージング、よく聴けばどこかで誰かが溜息をつくのが聞こえそうです。また、リズムは歴代のトリオの中では一番「ノリ」がいいかんじで、踊れそうな曲さえあります。昔にこのアルバムをLPで聴いたときは正直Bill Evansに似た演奏をするピアニストだと思いました。
Camel

BREATHLESS
(820 726-2/UK)
なごみ系プログレッシヴロック
カンタベリー及びその周辺の音楽はおっとりしてなごみ度も高いながら、それでいて花の棘が刺さるように、また、真綿で首を絞められるような音の感触を感じます。このバンドもそういった音の感触を持つバンドで、リズムセクションはナイフで、メロディー楽器は木の材質、それらがひとつの彫刻を作るような感じを受けました。このアルバムが出た頃にこのバンドの来日公演を見ましたが、ライブではよりシャープな切れ味があったことを思い出します。ひょっとすると最近の日本のバンドはこのCamelあたりのバンドの音を参考にしているのでしょうか、ギターのフレーズやリズムの構成など近いものを感じるバンドがたくさんあります。私の気のせいかもしれませんが・・・。
The Style Council

CAFÉ BLEU
(POCP-1866/JAP)
ストレートに格好いい定番商品
細身のジーンズにコートを着ただけで格好いいなんて、ほんとに金をかけずに(かけているように見せなくて)お洒落なセンスを持っているユニットです。そのセンスは音楽にも反映されていて、シンプルな曲をシンプルな編成で格好よくやっています。以前読んだインタビューではBlue Noteとカプチーノが好きなんて言っていた記憶があります。この少し前のThe JamではMODSのリバイバルがテーマだったようですが、バンドのコンセプトにわかりやすいキーワードをもって来ているのは、Paul Wellerのアイデアマンぶりを伺わせます。流行を少しだけ先取りしながら、何年でも着られる良質の素材やデザインを持つ服のような音楽です。

その参へいく

その壱へいく

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