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このページは、文章系個人サイト『ニーモニック・スピンSR』の旧記事アーカイブの一部です。もしよかったら、以下の本体サイトもご覧いただけると嬉しいです。






1.20.2002 (Sun):『リファレンシャル・ギア』

■こんにちは。土曜の夜から日曜の朝にかけ、8時間耐久html作成中(そして続行中)のテラモトです。休日なのにいつもより集中して働いてる気がするその 訳は、ニモスピ・マグネットコーティングV作戦の第二段階として・プロフィールページである*about mnemonic spinnを大改修している仕組みなのです。

■それというのも、僕の近くにいる何人かの人に話を聞いてみたら、今までのニモスピはどうも匿名性が強すぎて文章に入り込めない・かなり縁遠い感じがするんじゃないかなって指摘されたんだ。「オレは知ってるからわかるけど、いきなりspinnです〜とか言われても正体不明過ぎるんじゃない?」って。なるほどね。実際いままで、僕はプロフィールページを出だしからネタで飛ばして煙に巻く設計にして、先入観ゼロの状態で文章読んで欲しいワなんて考えていたんだけど、どうもね、先入観があったほうが、単純に文章そのものが読みやすくなるみたいなんだよね。

■俳句みたいに短いならともかく、長めの文章を読むとき、人はその書いてるヤツの真意をじわじわ探りながら読んでいきます。主語と述語をつなげ・代名詞を変換し・言葉の選び方からテイストを感じとる、そんな左脳全開のかなり高度な認識作業だ。

■そしてそこでは文章本体と同じくらい、「書いてるヤツがどんな人間か」っていう先入観=バックグラウンドの知識が、大きな手がかりになってるようだねコナンくん! そういえば「同じ言葉でも人によって意味がかわっちゃう」なんてバックグラウンド知識が及ぼす影響に、僕やキミや世界は日々悩まされているじゃないですか警部!

■あの娘のふとした言葉だけ、何故だか胸に突き刺さる。生島ヒロシの言葉だけ、どうにも信用しきれない。僕は違うけど、「つんくプロデュース」ってだけで曲をキライになる人もいて、しかもそれって、人類にとっては仕方のないことみたいなんだ。

■で、以前の僕はそんな影響がイヤで、匿名性の高い環境=鏡のように静かな世界を作ろうとしたんだけど‥‥‥でもね、それって逆に、読む人にとっては無風状態の海をヨットで進むみたいに読みにくい・手がかりに乏しい状況を作ってたんじゃないかなって思うんだよね。ただでさえ、僕のはあんまり読みやすい文章じゃないのに!

■誤解を恐がって手がかりをなくすより・誤解されてもいいから読む手がかりを提供したい。つーか時には誤解されたってOKじゃ、そもそも読んでもらわなきゃ意味ないじゃねーかと、そんな方向転換から、以前とは全く違った重武装のプロフィールページに仕上げてみたんだけど‥‥‥どうですか?

■ほんとはね、まだ趣味とか語りまくることについて抵抗感が心に残っています。実際書きすぎてるかもしれないし、項目や内容については改善の余地がありそう。正直いってまだそんな状態ながら、ADSLフル稼動で探したリンクを文中でハードコアに張りまくったのが、まあなんつーか最大限の照れ隠しみたいなもんです////(←照れてる)。

■もちろん、そんなにつまんないモノを書いたつもりはないけど、いやー、こればっかりは分からないや。もし何か気になったことがあったらテラモトまでメールください、とかってお願いしながら今日の更新はここまで。それじゃ、またね。


1.27.2002 (Sun):『トリプルH』

■こんにちは。冬の週末をまったりと流すテラモトですよ。閉じかけの夕日に照らされる校舎、なんてイージーな光景を窓の外にながめつつお送りする、今日のテーマはトリプルH。

■最初のHはなんたってホリデー。昨日土曜日の夜は、夏冬コミケ関連の仲間と40人規模飲み会でスラミン〜グ。楽しかった〜。彼烈火話とかな(2002年なのに‥‥‥)。

■年2回しかないイベントに関係してるだけあって、僕にとってのコミケ関係はカイシャなど日常とは別の、独立した星座になってます。そして、そこでの僕にはいつもと違った役割があり・別なモードのトークと冗談になるんだけど、それがこんなにもリフレッシュになるんだなーと再確認させられた。

■日常の無限にも思える連鎖からふわっと遊離できる世界がステキだし、ある意味カンペキにトランシーな体験といえるのではないか。そんなの貴重であり大事にしたいので、よろしくという気持ち新たに。みんなにも、そういう世界ってあるでしょ?

■そして2個目のHはハウスミュージック。この前プロフィールページを更新したときにもしみじみ感じたのは、ちょっとマニアックな12インチシングルの世界とはいえ、WWW探すと結構サンプルサウンドがアップされてるんだよね。例えばNYのWAVEやドイツのCOMPOSTといったレーベル自身が運営するサイトや、カナダのHOMEBASSみたいなアーカイブ/通販系ページには、real audioやmp3で豊富にサンプルが置いてあります。

■その結果、WWWでサンプル試聴してから→レコ屋にダッシュ、みたいな買い方が可能になってきました。サンプルの音質も悪くないし、こんなの数年前じゃ考えられなかったよ。何げに未来を実感する一時です。音楽は間違いなく、本当に本当に探しやすくなった。

■さてと、それでは早速Solu Music feat. Kimblee の『Fade』ってヤツを買いにいっちゃいますよ(現在形)。 SOLU MUSIC(ソリューミュージック、って読むのかな)によるこのトラックは、ゆるやかな曲線と仄(ほの)かに漂う上品なお色気で僕をせめる、もー辛抱たまらん1曲でごわすよ‥‥‥なんて音楽オタ話にすら、ちゃんとサンプルへのリンクが張れるんだよねー。おかげで「マニアムフフの固有名詞トーク」に終わらずに済みます。ぜひ聴いてみて。僕は行ってきます。

‥‥‥

■(5時間後)ただいまー。うーん残念、「Fade」は2月上旬入荷(予定)だってさ。そのかわりFauna Flashの最新リミックス・コンピ『confusion』を買ってきた。ディープで渋い最近ハイテクジャズ。キョート・ジャズ・マッシブのリミックスも入ってて、mafとか好きな音だと思うよ(私信)。サンプルサウンドがリンク先にあります。

■そして最後のHはヘリテイジ(遺産)ということで今回の更新ネタにつながります。ここ*days flowの過去分をまとめている*past flowにて、2000年の10月から12月くらいまでの話をアーカイブしました。当時わりと好評だった認知心理系実験話・「メンタルローテーション」などがこの時期に収録です。読みにくかったところをちょっと修正したりしてるし、良かったらまた読んでみてください。

■というところで今日の休日はここまで。また日常がはじまります。それじゃ、またね。


2.3.2002 (Sun):『ワンウェイ・チケット・YEAH』

■こんにちは。先週から楽しみにしてた『Fade』を渋谷のManhattan 2で無事入手&再生&ノックアウト中のテラモトです。

■そしていま僕がもう一つ楽しみにしてるのが、WWFスマックダウンツアー・横浜公演。スカパー加入を機に娯楽スポーツ界で最もシビれる彼らにハマって約半年、既にネットでチケットを購入済みなんだけど、このネットで買うチケットがさ〜非常につまんないんだよね。

■何がつまんないって、半月も前にコンビニで代金を払ってあるにもかかわらず、僕の手元にはまだ素気ないレシートしかないってことだ。なんかさ、折角のイベントだし、こうもっと特別な紙のチケットをサイフに意味無くしまってワクワクしたいのに、僕にはまだセブンイレブンのレシートしかないんだよね。そんなのさみしいよ。

■これは違う話なんだけど、僕は現在、カイシャで紙のポストイットを超時空愛用しています。やるべき仕事や解決しなきゃの問題を小さなポストイットに書いてボードに貼る。優先順位の高いものほど高い位置に貼って、ときどき眺めては順位を組み替えたりグループ化して、処理したポストイットは外す。白状するとこれってD.A.ノーマン先生の本の受け売りで、憶えておくことを頭の外に出して脳の負担を軽くし、よりステキにクリアな思考ができるようにする仕組みなわけです。ええ、僕も最初は半信半疑でしたが、やってみたらびっくり。たまらなくいい具合なんですわ。

■確かにスケジュール帳やノートも外在化のシステムだけど、ポストイットなら実際のボード上で順位づけみたいな処理までやれるから、比較にならないくらい深いレベルまで脳の肩代わりができる。おかげで余った処理を使って、僕はもっとたくさんのことを考えられるようになった。ぶっちゃけて、なんだか自分がカシコくなったような錯覚に陥ることができます。これはおすすめですよ奥さん!

■そしてさっき話したチケットも、このポストイットと似た機能がある気がするんだよね。公演日や開演時間、会場名、座席番号といった情報を、チケットのかたちで頭から外に出すことで、脳味噌はラクになり、その分僕はワクワクや妄想車輪を大回転させることができるんじゃないかなって。それってとても楽しいことだし、印刷チケットのかなり重要な機能に思えてくるんだけど、どうか?

■30年前、矢吹ジョーはサンドバックを憎いあんちくしょうとして外在化してパワーを得ていた。会社の先輩・AEROさんが『かつて刑務所につながれた男が唯一支給された紙に筆で「娘」と大書して、火照った身体を爆発させた』っつー涙なくしては聞けない逸話を教えてくれたけど、これもまた、記憶の外在化と妄想特急のシアワセな結婚の例だと、思うんだよね。

■記憶の外在化がもたらす効果の底知れ無さには本当に驚くし、イスラムで偶像崇拝を禁ずるのもちょっと分かる気がするな。一方の僕はといえばこういうワクワク加速装置が大好きなので、今後ともすすんで編み出していきたいと誓い新たにしてみたよ。

■さて、今日は来訪者ゲストブック*ridersの#66に、高校のときの友達・zenが登録してくれたのでご報告。彼のページ・『アレコレーズ』では、あいかわらずのファインな才能と東京好きぶりが発揮されてて嬉しかった。彼の文学にはユーモアの効いた音楽があって、しかも彼の作る音楽にはユーモアの効きまくった文学があるのです。『形象』とか『Paradice Lost』とかって名曲を、僕はいまでもいつでも頭の中で再生できるよ。窓の外で雨を待つとき、お茶にするのはzenの曲の影響だ。これからもよろしくだぜ。

■そんなところで、長くなった今回もおしまい。それじゃ、またね。


2.11.2002 (Mon):『シャットアップ・アンド・ダンス』

■こんにちは。雪が降ったり・ふわっと晴れたりの3連休最終日の午後をゆったりと過ごし中のテラモトです。国際好きとサンセリフ書体好きを同時に満たすギリシャ由来の好企画・冬季オリンピックの中継をなんとなく観たりタイムを満喫。(マイクを手に)はて〜なく〜。

■‥‥‥とかってNHKソルトレーク五輪公式テーマソングになってるのが、MISIAの新曲・『果てなく続くストーリー』です。オリコン調べでも発売初週で第3位っていうヒット曲だけど、なんか、なななんか、この曲って印象薄い気がしない? 服部隆之アレンジのストリングスも響きわたる圧倒の大バラードだし、もちろん歌は上手だし、僕好きのする素敵ピアノも揃っててかなり高得点なんだけど、なんか印象薄いというか、優等生的だよなって僕は感じてしまった。

■そうだ。考えてみれば、優等生はいつだって印象が薄い。つーか事態はむしろ逆で、出来がよくて印象薄いものを、人類は「優等生」とか「あのひと善い人よね」とかゆってカッコにくくって切り離してるんじゃないかな。笑顔ともさげすみともつかない表情で優等生をスマキにし、ハドソン川ならぬ忘却の河に放り込んではすまし顔。そうだ、それくらい人類は優等生に対して容赦がない。

■一方で、出来が良くても存在感があれば「優等生」なんて切られ方をしないわけだ。典型的なのが『traveling』宇多田ヒカルで、彼女はどう見ても「優等生」扱いとは違うんじゃないかなって思うんだよね。これって要は、「出来がいい」のと「存在感がある」ってのは評価軸が別で、しかも「存在感」は「出来がいい」に対していつも優先する‥‥‥って話かも。そして「存在感」は「面白い」と読みかえてもよさそうだ。出来がいいのにつまんない=優等生、なんてね(涙)。

■さらに残念な点を1つ指摘するなら、「出来がいいのにつまんない」側から見ると「出来が悪いのに面白い」のってムカついちゃいがちなんだよね。出来悪いくせになーんかモテるわけよ奴ら。コンプレックス感じちゃうわけよ。折角がんばって出来良くしてんのに、ボクはワタシは評価されない、ちっともモテないじゃないかと。なんだなんだ、だんだん他人事っぽく無い雲行きになってないか? いやいやそんなことないぞー。

■そして優等生は悲しみにくれ→やがて涙も枯れ→いつしか孤高の世界・「出来がいい」を大事にしあえる仲間が集まる世界に旅立っちゃったりするよね。うーん、確かにそれも1つの生き方かも知れないけどさ、今の僕としてはそこで1回白紙になって、存在感や面白さを素直に評価できる身体になるほうが建設的だと思うんだけど、どうか? 素直になるのはいつだって苦しくて難しいことだけど、会員制の優等生クラブなんて先行きつまんなそうな、ゆるやかな死が待ってそうな、そんな気にもなるのかなんて、考えたりするけど。

■さて、枕噺も一段落したところで今日の更新行ってみます。まずはリンクページの*linkageでは、2つの新規リンクを追加。前回ご紹介したZENの『アレコレーズ』と、カナダのダンス系レコード通販サイト『Homebass』。後者はダンスミュージックの試聴mp3が充実してるので愛用しています。

■そしてニモスピ来訪者リストこと*ridersの#67には、カズスケさんがエントリー。URLをいただいた彼の『MusicRider.com』は、軽やかな音楽系ニュースクリップサイトの趣で便利過ぎです。これからもよろしくお願いします。

■そんなこんなで外はとっぷりと夜。連休も最終コーナーを立ち上がりました。それじゃ、またね。


2.20.2002 (Wed):『ナチュラル、ビューティ、ベーシック』

■こんにちは。明日は早起き必須の緊急シチュエーション中のテラモト(4時間後に起床予定)です‥‥‥って単にシゴト関係なので別段騒ぐことはないんだけど、素敵CDを早売りで購入→聴いてる今夜は、そう今夜だけは、ヘッドフォン使用ながらひと騒ぎしていきたい気持ち。再生時間=5分45秒だけのわがまま、つーか。

■で、そのCDというのが、くるりの新曲・『ワールズエンド・スーパーノヴァ』(左図)・4曲入りマキシシングルで¥1200[税抜き価格]だ。音そのものを是非リンク先で聴いてみてほしいんだけど、前のアルバム『TEAM ROCK』をさらに発展させた、凛としたエレクトロダンスミュージックに仕上がっています。

■(歌詞にもあるように)スウィングして粘るベースラインが絡み、熱を帯びたリズムは繰り返し、ピュアなシンセトーンが浮かんでは消え、そしてフラットな岸田繁のヴォーカルが重なるぜ。でも、僕がなにより一番気になって・気に入ってるのって、その類希な「自然さ」なんだよね。

■自然なテクノ。ここで私事混じりに思い出すのが、10年前のテクノシーンのことなんだ。ローランドのリズムマシン・TR909や生産中止のアナログシンセが急に大注目されて、中古価格が跳ね上がってたあの頃。そう、CD音質のサンプラーがようやく軽自動車やバイクくらいの値段で買えるようになり、多数の新型シンセが発売され、テクノくんやテクノさんが猛烈に機材を積み上げてたあの頃のことだ。ていうか僕も積み上げようとしたものさ(遠い目)。

■当時のテクノやダンスミュージックって、積み上げた機材の重さに比例して肩に力が入ったような、愛すべきストレンジさを持っていたと思うんだ。でもそれって、音楽自体に秘められた可能性に反して、実はある限界を持った狭い世界だったんじゃないかなって(平沢進とか、さ‥‥‥)。結局ね、どこまで行っても普遍性を持てないような、普遍性をイケニエにして可能性をとってるような、そんな音楽だった気がする。

■ところが、2002年2月20日リリースのくるりの曲には、あの頃のテクノが持ってたような歪みがちっともみあたらないんだ。くるりというロックバンドが、ロックバンドとして(ギターやベースのように)ごく自然にシンセトーンを重ね、リズムを刻んでいる。スーパーカーとかもそうだと思うんだけど、こういうロックバンドの自然なシンセトーンに、僕は新鮮な解放感をおぼえるんだ。

■それは、キーボードに慣れることで、ワープロが文書を清書する装置から→考えごとをするための日常的な道具として解放されるのと似てる。音楽機材が簡単で高性能になり・もうシンセを積み上げなくてもよくなったことで、テクノやダンスミュージックはようやく日常のもの、普遍性をもった音楽になれる準備が整ったんじゃないかなって思うんだよ。しかも、シンセトーンや反復するリズムそれ自体の魅力はそのままに、誰もがテクノサウンドに込められた「気持ち」とか「思い」の部分にアクセス可能になってるんじゃないかと思うんだけど、どうか?。

■これってテクノやダンスミュージックにとっても素敵なことだと思うので、僕はこの12cmシングルを、むしろダンスミュージックなみんなにお勧めしたい。そしていよいよ寝ないとヤバい感じになってたから、CDを停止して‥‥‥それじゃ、またね。


3.7.2002 (Thu):『プロミスト・ランド』

■久々+こんにちは。風邪でプチダウン中のテラモトです。カイシャを休んだうららかな昼下がり、クラス会マダムの襲来に舌打ちしながらファミレスのパンケーキにメイプルシロップをぶちまけ、なんとか機嫌を取り戻した後ベッドにひっくり返ってひと眠り。熱で濁った夢の中ぼんやりと思い出すのは、先週の金曜(3/1)に行った『WWF in 横浜アリーナ』の素敵すぎる一夜のことだ。HELL YEAH!

■とかってプロレスを生で観るのは初めてな上に、日本のプロレスが全然わかんない・WWFしか知らない僕には批評めいたコメントをする資格なんてない。けど一つ言えると思うのは、あの日あの時・横浜アリーナに生まれた一体感は、奇跡のように凄かったってことなんだよね。もちろんイヤな気持ちの人もいたと思うけど、リングを中心とした1万6000の観客による期待と熱狂のパーフェクトストームを、僕はA席西87列から確かにこの目でみたよ。つーか僕自身もあのアメリカの観客達のように、ロック様の決めセリフを一緒になって絶叫していた。「ザ・ロック・イズ・クッキン!」

■この半年スカパーでWWFを見てきて驚いたのは、個性豊かなスーパースター達によってリングサイドで繰り広げられる下世話で分かりやすいストーリーと、観客が会場で一緒になって共有できる要素が常に用意されていく、アメリカンエンターテイメントらしい行き届いたサービスっぷりだった。日本にも猪木の「1・2・3・ダァー!」っていう、観客全員が一体になれる回路があるけど、ああいうお約束装置が随所にちりばめられてる。例えばストーンコールド・スティーブオースチンの「What?」をはじめ、それはもう枚挙に暇がない。

■そして僕らは、テレビを通して会場の観客が絶叫するセリフ(「チャント」っていうのかな)を何度も何度も見て聴いて、いつのまにか頭の中で、会場で叫び・興奮しているだろう自分自身のシミュレーションを済ませている。言い換えれば、「できあがっちゃってる」状態なんだ。で、ついに訪れたライブ会場で、僕らは何度もシミュレートしてきたあの一言を待ち焦がれちゃう。やがてその瞬間は訪れ、レスラーと共に絶叫→爆発→大満足。そう、これがお約束装置のシステム概要だ。ドリフの「カラスの勝手でしょ」や「志村うしろうしろ!」と同じこの手のお約束装置って、ある意味とてもイージーに見えて・でも確実に満足されるおもてなし方の一つだと思う。そんな装置がカンペキかつ強力に作用したのがあの3月1日の横浜アリーナで、僕らはずっとシミュレートしてきたあの興奮を3時間にわたって実行し、完全に満足させられてしまった。

■言葉遊びをするぜ。「接続」を意味するカタカナ言葉には「アクセス」と「コネクト」の2つがあるけど、アクセスがあくまでも冷静に他人として接続することだとすれば、コネクトは熱く当事者として・まるでその場にいるかのように振る舞う=同化するタイプの接続を意味してるんじゃないかなって思う。

■で、昔語られていた夢のようにドキドキするネットワークって、まるで世界が自分と同化するような、「コネクト」タイプの接続のことを意味していたと思うんだ。けどあれから数年経って、日常化した僕らのネットワークはどこか冷めた「アクセス」になっちゃった気がする。「アクセス」はスマートでウザくないし悪いことじゃないけど、横浜アリーナで1万6000人が「コネクト」した時の興奮を思い返すと、ちょっとつまんないなって気もするんだよね。どうか?

■でも、だからっていまさら過去に走るのも無理あり過ぎだよね。そこでコンピュータによるおもてなしを担当する僕としては、変わっちゃった時代や環境の中でまた違ったドキドキ発生を編み出していきたいと思うし、WWFのお約束装置にはかなり重要なヒントが隠されてるような気がして、気になります。研究を続けたい。

■そんなわけで、今日もなんだか話が長くなってきたしこのへんで。それじゃ、またね。


3.18.2002 (Mon):『テレビしびれて』

■こんにちは。日本各地の日記で報告されているように、横浜もすっかり春めき春うらら。陽気に誘われたのを理由に久々のレコ買いに走ってムフー大満足。ネイサン・ヘインズ『Believe』のケニー・ドープmixが春っぽくて良い感じ‥‥‥というか、春っぽい曲を聴きたい雰囲気になってきたのを実感だ。DMR(レコ屋)の店先ではYOU THE ROCK★もゴキゲンだったよ(目撃情報)。

■そんな僕様とはいえ、前回の更新で書いたように先々週末と先週末のお休みは、風邪のせいで暗く暗く寝込んでいた。一日中フトンかぶってテレビでスカパーを見てる、真にハードコアなヒキコモリっぷりを演じていたんだけど、その時僕は時間感覚をカンペキにロストする体験をした。そしてその秘密は閉めきった窓、そしてスカパーの無時間性じゃないかと、当時を振り返って思うのです。

■地上波のテレビって、時間によって内容や雰囲気が変わっていくよね。朝は天気とニュースで始まってワイドショーになり、昼は森田和義アワー・笑っていいとも!と連続ドラマがあり、サスペンス劇場(再)で昼下がったあとは夕方のアニメと夜のバラエティ番組へと続き、各局自慢の1時間ドラマがあって、スポーツとニュースが24時を告げ、ダラけた雰囲気の深夜番組へとつながり最後は映画で放送終了、みたいなね。もともと僕はあんまりTVを観ないほうなんだけど、子供の頃から慣れ親しんだこの地上波シークエンスはしっかり身についていた。

■一方、スカパーに揃った何百というチャンネルはそれぞれがそれぞれの専門性でピュアに特化していて、時間による変化がほとんどないんだよ。Jスカイスポーツは一日中スポーツ番組やってるし、MTVはずっと音楽を鳴らし続け、曽根純恵アナがキュートなJNNニュースバードは本気で一日中ニュースばっかりやってる。どのチャンネルも24時間ほぼ同じ内容・同じ雰囲気で放送されてるから、熱で寝込んで→起きて観たスカパーから、僕は今何時なのか全く把握することができなかったんだ。いまは夕方? 早朝? それとも天国?

■そして僕は、地上波テレビは時計がわり=太陽と夜の代わりに時間を知らせてくれるものだって気付かされたという仕組みなのです。画面左上に出る○時○分みたいな本格的な時間表示がなくても、テレビには「アニメ=夕方」とか「お夜食CM=深夜」みたいな、だいたいの時間を表す機能があるんじゃないかと。

■これは曜日感覚にもいえるよね。地上波テレビはウィークデイと週末で番組構成が違うから、振替休日の月曜にテレビを観るとき、例えば休日ムードの中でルパンの再放送を観るときなんかに、僕やみんなや人類は不思議な浮遊感覚を味わうことができる。だけどスカパーのチャンネルには曜日の違いもないことが多いから、休日だろうが平日だろうがいつまでも変わらない・同じ気持ちでテレビを観ることになるんだよね。まあ、それがスカパーのいい所なんだけどさ。

■ところで、明治時代の帝国海軍では「金曜=カレー」と決めて、失われがちな船員の曜日感覚をキープし・メリハリと士気を保った‥‥‥みたいな話をきいたことがあります。そこで僕は、近い将来スペースコロニーが建造されてみんなが生活する暁には、コロニー内テレビ放送に24時間サイクルのシークエンスをデザインしていきたいと思うんだけど、どうか。地球の自転からフリーになっちゃう宇宙空間だからこそ、時間感覚は慎重にキープされるべきじゃないかと思うし、そうじゃないと「火曜の朝イチまで」なんて締め切りを簡単に忘れられる、世にも恐ろしい世界になってしまうよ!

■そしてこのWWWも、時間感覚や曜日感覚の無さは負けてない。たぶん便利じゃないだろうけど、毎日使うgoogleなんて曜日や時間帯で検索結果の雰囲気がかわったら楽しいかもなーなんて思いつつ、今日はここまで。それじゃ、またね。


4.6.2002 (Sat):『エアロ・スペース・エンジニアリング』

■ほぼ3週間ぶりにこんにちは、テラモトです。こんなに間隔を空けちゃうなんて、マメにアクセスしてくれるみんなにすまなく思う一方、気持ちと身体の中に実はそんなに長さを感じてなくて無責任っぽく戸惑います。カレンダーを前に首を傾げる。そっか、ひょっとして光の速さに近いスピードで進んじゃってたかも〜なんて、ウラシマ効果を満喫だ(答え:キャパ越え気味で日々ばたばたしていただけ)。

■そんな感じで、良くも悪くも宇宙時代に向けて準備に怠りないんだけど、どうにも断ち切れないのが、そう、ここ30年かかりっぱなしの重力、お風呂もいっしょ寝るのもいっしょ・いつも一緒の重力だ。エレベーターに乗ったときなんかに慣性力でふっと忘れる時以外は、いつでもどこでも存在を感じさせる重力。まあ、部屋の散らかり具合とかギリギリ許せる範囲で抑えてくれたりもするので基本的にはすごく好きなんだけど、ごめん、正直1G飽きた。たまには違う重力と付き合いたいなー。

■とか思ってたらアレだ、maf*mafことフクダが、縁あってジェット機による無重力体験をしてきたらしい。う、羨ましくなんか‥‥‥羨ましくなんか‥‥‥ないから!

■上でリンクしたページの中で、彼は「無重力になると空間を広く感じた」ってコメントしていました。そうかー。今僕がいる部屋も、床をベースに下から家具を並べて構成してるし・CDも雑誌も床から積みあがってるわけだけど、これがもし床以外の選択肢、それこそ天井や壁をベースに考えられたら、その自由度ははかり知れないよね。もっともっと散らかせるし、もっともっとゴロゴロできる。そんな可能性の広がりをもって、彼は空間を広く感じたんじゃないかなーなんて、相変わらずの1Gの中ながら想像してみたよ。

■でもそうだ、部屋の広がりに限っていえば、1G下でも疑似体験できる方法があるよ! 用意するのは手で持てるサイズの鏡を1つだけ。みんなもきっとやったことあるでしょ? あれだよ、鏡を目の下にもってきて、天井を映してみる遊びをやろう。つーか早速やってみよう。僕はもう鏡を持ってきたぜ。

■目の下の鏡に上を映すと、まるで天井が床になったみたいに見える。蛍光灯をまたぎ、意外に高い鴨居を乗り越え、逆に見えてなかったリアルなローテーブルに向こうずねを打ちつけながら、いつもと違う部屋の中を歩いてみよう。立ってるだけじゃダメだ。ウロウロ歩いて、天井をベースにした時の部屋を頭の中に描こう。45度横に角度をかえれば、部屋の壁=棚に足を突っ込んで歩いたりもできる筈。

■さて、ひとしきり遊んでふと鏡を外せば、そこにはさっきまで(文字どおり)縦横無尽に歩きまわった部屋があるはず。天井も歩いたし、壁も歩いたよね。こうなるとさ、今立ってる「床」が、地球の中心方向に働く重力が決めただけの、単なる選択肢の一つに過ぎない気がしない? もし今いきなり無重力になったとしたら、さっきみたいに天井を歩いたりできる。昨日までの僕よりもっと自由に、この部屋を使ったりできる。ま、家具やCDもフワフワめちゃくちゃに散らかっちゃうだろうけどね。

■経済や科学技術も昔みたいに牧歌的じゃないし、まだまだ僕らは無重力生活を楽しめそうにない。それはちょっとばかり残念だけど、こうしていつも通りの重力下でも、宇宙や無重力世界のことをいろいろ考え、つーか妄想にひたって楽しむことは楽しくて楽しいから十分楽しくできると思うんだけど、どうか。

■とかいいつ依然として無重力は羨ましいので、せめて3万円ちょっとでできるスカイダイビングくらいやってみようかなとか思ったりしています。てなわけで、それじゃ、またね。


4.28.2002 (Sun):『ビギニング』

■あーもうごめんまたお久しぶりになったテラモトです、こんにちは。本屋のひとつもないデッドエンドシティ・神奈川新町のオフィスでマゴマゴしてるうちに、また3週間だぜ。毎日見てくれてた人ありがとう。やれやれですね。

■やれやれだけど・そして徹夜明けの日曜の朝だけど、実はいま僕はすがすがしく素敵な充実感に酔い中です。というのも、前から作りたかった新企画=トップページに直接装備するショートコラム・『*psyco-frame』をこうして発表できるから。これは僕がどんなに離れていてもニモスピに常時接続・遠隔操作できるシステムであり、imodeの圏内なら、僕というサイコ野郎が携帯から文章をWWWにひっかけておけるフレームなのです。これなら、より生っぽい思いつきレベルを思いついた瞬間の生っぽい状態で楽しんでもらえそうだし、今回みたいな長期の静止状態にも入らなくて済みそうです。

■以前は「ノートPC+AirH"+ファイル転送ソフト」みたいな格好いい機器構成も考えてたんだけど、思いつきを公開するってだけの目的なのに・ニモスピをフルセット更新できるようなシステムを持ち歩くのはやり過ぎな気がしたんだ。だいたい常に荷物をギリギリまで減らしていたいタイプで/ちょっとでも明るい曇り空なら80%の雨予報でもカサを持たない僕には、そんなやり方が続く筈がない。理想は昔の歌人がサラサラ〜と一首読むような短冊くらいのイメージで‥‥‥となれば、現代で一番短冊に似てる携帯電話しかないなと。携帯ならもう既に持ち歩いてるし・満員電車の中でも入力できるし、こんなに嬉しいことはない。いつでもimodeにいけるから。

■あとは出力先のWWWサーバにデータを受け取れる仕組みを作ればOKなので、昨夜遅く・横浜市に住む30歳の会社員がgoogleに「perl 講座」って入れて検索するとこからcgi作りをはじめたのです。いやー大変だった。最初は全然わかんなくて・あらかじめ買っておいたperlの本と見比べながら2時間たって、ようやくブラウザに『テスト』って文字列を文字化けなしで表示できた時は、夜中なのに本気笑顔で小踊りする陽気なリトルダンサーぶりだったし、今朝未明ようやく狙った仕様を満たすスクリプトが書けた時の達成感は、さらにさらに格別だったよ。もう、単純にイエーイ。

■正直いってOSやブラウザによってはうまく動作しないかもしれない、そんなドキドキのシェイクダウンなので、表示に不具合のあった方はご連絡いただけると嬉しいです。てなわけで告知に終始した今日の*days flowでした。それじゃ、またね。


5.4.2002 (Sat):『クロック・ワーク』

■こんにちは。まだ夏がはじまる前の・甘く涼しい空気が気持ち良すぎる横浜/東京の日々に、この身をまかせ中のテラモトですよ。トップページの新装備・『*psyco-frame』で僕が連日送り出す書き込み内容も、昼夜を問わず・晴れれば晴れた・雨なら雨で、この美味すぎる空気に酔いっぱなしの酔いどれです。いいわー。夕暮れ時はほんと最高。早朝もいいんだよね。ていうか全部いいね。

■そんな時間と空間と世界の中で僕が先日成し遂げた買い物はというと、えっとね(照れながら)バスルーム用の防水時計なんです。LOFTやハンズで適当に売ってるような、2000円もしないプラスチックの白いやつね。自分で言うけど、30男がかわいい買い物だよな。

■とはいえその理由は年相応にかわいくなくて、朝の忙しい出勤前にフロに入る習慣を持つ僕が、ギリギリまでシャワーを浴びられるように装備した限界測定装置なのです。20分の電車に乗るから髪をかわかすから歯磨くからえっとえっとえっとゴゴ50分くらいまで入ってられる???みたいな極限の世界で、僕は毎日長針と短針akaチックとタックの角度と切り結ぶ。

■とかって朝の戦略兵器=風呂クロックが、夜になると全く違う顔を見せてくれたのでここにご報告したい。深夜の帰宅後、高ぶった神経や疲れを溶かしこむべく用意したフロにつかったとき、僕をもてなしたのは風呂クロックの「秒針」、いちばん細くて長くて・速く動く針だったんだ。

■クロックを買う以前の深夜フロ環境を思い返すと、僕はゆったり長く入浴するつもりで→なんだかさっさとフロアウトしてたんだ。時間から解放されるつもりで入ったフロなんだけど、そこはまるで病室のように刺激の少ない・とらえどころの無い退屈な空間だった。そしてガマンの足りない僕は、すぐに飽きてリラックスもそこそこに出ちゃってた。

■けれどこのたび風呂クロックがやってきて・秒針が1秒に1回=60BPMでリズムを刻んでくれただけで、僕はゆったりした時間を逆に確かなものとして感じられるようになった。意味のない茫漠としたランダムドットがシュッと意味を持つみたいにして、「ゆったりした時間」そのものをしっかりと認識し、僕はいままで以上にリラックスすることができたんだよね。

■朝の限界領域の中でも見えていたはずなのに・全く存在を意識してなかった秒針。でも夜は全く逆で、長針と短針は意識されず、ただ秒針がリズムを刻んでいた。思えば秒針が描く角度には、短針や長針の描く角度と比べてほとんど意味がない。だからこそ駅の時計には秒針がなかったりするわけだけど、そんな秒針の魅力って、「秒を表示すること」よりも「リズムを刻むこと」にあるんじゃないかと思うんだ。

■そして一見せわしなく感じられる秒針が逆にリラックスをひきたてるのって、ドラムンベースやハウスやテクノやブレークビーツといったダンスミュージックが、刺激に満ちているようで逆にリラックスを感じさせるのと同じだと思うんだけど、どうか?

■さて、今日の更新情報は、ひさびさに来訪者リスト・『*riders』の#68にてryottaさんがエントリー。レコ屋ガイド経由でみつけてくださったみたいですけど、いつもどんな曲を聴くんですか? そしてこれからもよろしくです。

■僕が最近聴く機会が多いのが、ほのかに流れる花の香りのように切な素敵ディープハウスで、akの『say that you love me 』(Francois K remix)。日本語ハウス珠玉の1曲です‥‥‥てな感じで更新も終わったし、フロインしてきます。それじゃ、またね。