J.F.Kennedy と 上杉鷹山





 John.Fitzgerald.Kennedy、第35代アメリカ大統領である。映画「JFK」で題材になった人物だ。テキサス州ダラス市内で暗殺されたのは余りにも有名な話だ。彼はアメリカ史上最も若く抜群の人気を誇った大統領であった。そのルックスは大統領選挙前のテレビ討論で大きく役立ち、討論前の劣勢をハネ返して当選したという逸話まである。彼はニューフロンティアという政策を打ち立てた反面、ベトナム戦争を引き起こした。

 そのケネディが1961年、大統領就任直後に来日した。空港で待ち構えていた記者団の中に1人の女性が、「日本人で尊敬する政治家は?」と訪ねると「YOZAN UESUGI」と答えた。彼女はおろか記者団も誰かわからず唖然としてしまった。日本人でさえ名前も知らないYOZAN UESUGIなる者は何者なのだろうか?

 上杉鷹山、かの戦国大名・上杉謙信の子孫で徳川第8代将軍・吉宗の死後に第9代米沢15万石(今の山形県)の藩主になった人物である。これを読んでくれる何人がこの人物を知っているだろうか?そしてケネディは何故この人物を尊敬している、と言ったのだろうか?

 鷹山が藩主になった時代、人々の生活は困窮し全国的な不景気にあえいでいた。米沢藩も例にもれず、長年の借金がかさみ上杉家は崩壊寸前だった。鷹山は自ら粗末な服を身にまとい、粗末な食事をし、自ら手に鍬を持って田を耕してみたり、とおおよそ殿様とは思えない程の徹底した切り詰めを行った。その結果、米沢藩あげての切り詰め政策が実り、膨大な借金を返済された。また日本史で出てきた(であろう)天明の大飢饉に際しても日本中で多数の死者が出たにも関わらず米沢藩からは1人の餓死者も出さなかった、という。

 ケネディは日本人にすら馴染みの薄い、隠れた名君を知っていたのだ。これは日本人としては大いに恥ずべきことである。ケネディが鷹山を尊敬していた、ということが公けにわかる部分がある。なんとケネディの大統領就任演説である。明解かつ平易な英語で書かれていると今でも名文の1つに数えられているものだ。

  And so,my fellow Americans:ask not what your country can do for you - ask what you can do for your country.

Myfellow citizens of the world:ask not what America will do for you,but what together we can do for the freedom of man.

 アメリカ人の同士よ!国が君らに何をしてくれるかを問うのではなく国の為に何ができるかを考えてくれ。

 また全世界の同士よ!アメリカが君らに何をしてくれるかを問うのではなく人類の自由の為に共に何ができるかを考えてほしい!

 という名演説である。これは教養として覚えておいても何の遜色もないと思う。

 この演説から約200年前、上杉鷹山がこんな言葉を残している。

 「国家人民の為に立ちたる君にて、君の為に立ちたる国家人民にあらず」と。まずもって国家人民1人1人が頑張って国を良くしていこうという精神を持つべきだ、と述べている。ケネディの大統領就任演説と似ていると思わない?ケネディは鷹山の教えを自らの精神の中に取り込んだのだ。

 ケネディの師の1人は上杉鷹山であった、ということを示す1エピソードである。


2000.07.08



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