外国語





 古の昔、古代ギリシャ人は自分の民族が周囲の民族よりも優れていると考えていたので、自分達と同じ言語を話す人をヘレネス Hellenesと呼び、自分達以外の民族をバルバロイ Barbaroiと呼んで蔑んでいた。バルバロイとは「訳の分からない言葉を話す」という意味のギリシャ語だ。

 古代よりその時代の最先端の文化を担ってる民族の言語が公用語として認められてきた。ギリシャ文明が最盛期の時の公用語はギリシア語だったし、ローマ帝国が覇権を握るにつれてラテン語が広まり、ロ−マ帝国が滅亡してからはイスラム語やゲルマン語(今のドイツ語)や英語、フランス語、と発展してきた。また、帝国主義時代の植民地政策によってヨーロッパの列強支配によって南米やアフリカでの言語が欧米化した。ブラジルではポルトガル語、他の南米諸国はスペイン語、アフリカは英語とフランス語、といった風に。

 東アジアでも同じことが言える。文化の中心は常に中国であった。だから東アジアの諸国はこぞって留学生を中国に送った。日本で言うところの、遣随使・遣唐使、である。中国の公用文字は当然漢字であり、日本語の表記に用いる平仮名が昔の漢字から派生したことは周知の事実である。

 僕が浪人中に習った英語の講師の先生が良く言っていたことだが、自国語以外の言語を収得するにはまず自国語がしっかりできてないと無理なのだ。一般的に日本語は特殊だと言われる。英語を学ばれた方にはおわかりかもしれないが、日本語の場合はまず主語が来る。次に来るのは修飾語。そして最後に動詞が来る。しかし日本語以外の多くの言語は主語は頭に来るけれど、動詞はその次に来る。欧米系の言語や中国語もそうなのだ。

 日本人が諸外国語を会得しようと思えば、発想の大転換が必要なのは言うまでもない。まあ、英語に関して人に誇れるほど出来ない俺なのでそんなに偉そうなことも言えないのでこれくらいで辞めておきますケド。和製英語、って言われる言葉がある。はっきり言って和製英語はあくまで和製。本場ではまったく通用しないのだ。和製英語だ、と思ってた言葉でも実際はオランダ語から派生した言葉であったりする。ピンセット・オルゴール・ランドセルとか。もともとフランス語だったものにはアベック・コンクール・マロン・ピエロとかがあり、もともとドイツ語だったものにはアルバイト・ノイローゼとかがある。

 僕はもうすぐアメリカに行く。おそらく自分の英語のできなさを露呈することになるだろう。それで大恥をかくことになるかもしれない。日本人の評判を下げてくることになるかもしれない。マイナス面を考えたら数え切れない。もっともっと勉強していたら……、なんて勝手なことを考えても今さら遅い。

 たった1ヶ月の留学で僕の語学力が大幅にアップするなんて都合の良いことは考えていない。一朝一夕でできるようになったらそんな簡単なことはない。外国語に触れ、井の中の蛙を身をもって体験してくる、そういう機会だと思っている。ま、語学力が伸びることに越したことはないんだけど……。


2000.07.02



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