ワシントンDCの交通事情はかなり優れている。その交通網の中心的な役割を果たしているのがメトロレイル METRORAILと呼ばれる電車である。初乗りが1ドル10セントと安いことや、便利さ、快適さ、静かさ、正確さの点で非常に優れている、ワシントンDCの自慢の1つだ。電車の車内にはカーペットが敷かれていて日本の地下鉄のイメージとはかなり異なる。
路線は5つあって、レッド・ブルー・オレンジ・イエロー・グリーンに色分けされててその色の名前がそのまま路線名になっている。例えば僕がDCに行く時に乗っていたのはRED LINEであった。それぞれワシントンDCの市街地と郊外を結んでいて、市街地を走っている時は地下鉄で郊外になると地上を走る。車内も静かで非常に快適だ。
まず驚いたのは切符 FARE CARDについてだ。日本の場合、300円かかる区間を電車で行くときに350円の切符を買ったらその切符は当日しか使えないばかりか50円は交通局に吸い取られてしまう。しかしメトロは違う。もし5ドルの切符を買ったとしても2ドルの区間に使ったら残りの3ドルが永久に有効なのである。いつ使っても構わない。換金こそできないがまた次回に使える。もし初乗りの1ドル10セントを下回ったとしても次のFare Cardの購入の時にそれが使える。非常に合理的だ。
次に驚いたのは全メトロの駅にエスカレーターないしエレベーターが完備されているということだ。市街地の部分はどの駅も非常に深く掘られている為にエスカレーターは欠かせない。身体障害者の人の為にもエレベーターは欠かせない。多い駅ではエレベーターが5機もあるくらいだ。こういうところは凄く徹底してて感心させられた。
次なる交通手段はメトロバス METROBUSである。基本的にメトロの駅どうし、ないしはメトロの駅と付近を結んでいる。このバス、これもまたスゴイ。1ドル10セント以上は払う必要はない。しかもトランスファー TRANSFERと言ってバスどうしの乗り継ぎが可能でタダなのだ。僕は学校まで3つのバスを乗り継いで1ドル10セントで通っていた。乗車は至って簡単。前のドアから入り1ドル10セントをきっちり機械に入れて席につく。降りたいバス停の案内が聞こえたら運転手に知らせるヒモを引く。バスが止まったら後ろのドアからおりる。至って簡単だ。
メトロからメトロバスへの乗り継ぎも可能だ。メトロに乗る時にバスへのトランスファー・チケットを取っておけば1ドル10セントの料金が25セントで済む。ただ券を貰ってそれを支払いの時に運転手に見せるだけでよいのだから使わない手はない。
これまで良いところばかり挙げてきたがここからは僕が思った問題点を挙げて行こう。まずメトロ。駅が暗い。日本の地下鉄の駅の明るさが普通だと思ってる僕にとっては非常に暗いのだ。ちょいと犯罪が起こってもひょっとしたらわからないかもしれない。また駅にトイレがないというのもデカい。特に女性にとっては辛いことかもしれない。でもこれは犯罪防止の為であるらしいから仕方が無いことなのかもしれない。また行き先案内が見にくいから方向オンチの人とかだったら反対方向に向かっても何らおかしくない。最後に車掌さんの声が早口すぎるというのもある。路線図を持っていたら何となくわかるけどまったく知らない土地に来たらどこかさっぱりわからない。駅に着いた時の案内も「この電車は○○行きです」しか言わないから。ブーブーッ!
それからメトロバス。まず運転が下手。急停車やブレーキの遅れなんてザラ。だから立っている乗客はもう大変。何回、「Excuse me!」と言わないとダメなのかわからないくらいだ。ある日女性客が僕に「How a dangerous bus!(なんて危険なバスなの!)」と笑いながら言ってきたのには大笑いした。それからおつりが出ない。きっちり1ドル10セントを入れないと5ドル札や10ドル札を入れても1セントすら戻ってこない。バスの運転手もそれを見ても何も言わない。見て見ぬフリだ。
ま、いろいろあるが日本も見習う点は多い。子供を抱いた女性が乗ってきたらみんな競って席を譲るし、老人が乗ってきてももちろんそうだし。でも、利用していて気持ちが良いことには変わり無い。ワシントンDCの自慢、というのもうなずける所である。