眼鏡ノ端ニ踊ル影・第一話。
「激震!!イカレ量販店!!」
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名などは一切関係ありません。

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Gストアー。
「お客様は神の名をかたるクズ野郎。故に屠れ!」を社訓にし、
「価格破壊(違う方向に)」・「待遇最悪」・「クレーム上等」を通す
メガネ量販店である。

今日もココ「Y支店」ではイヤイヤここに飛ばされた新店長・館川(たてかわ)氏がレンズ用の型板を削りだしていた。ただ、「俺はスケープゴートか?あぁん!?」とか
「社長め・・・社長めッ!!!」と言うつぶやきから察するに、精神穏やかではナイ。

つい先日もお渡し完了の客(元・役人)のぞんざいな口調にミソバーストを起こし、投げたヤスリを脳天にクリーンヒットさせ、危うくお渡しではなく人生の方を完了させる所になったばかりである。

恐らく社長に見立てて削っているであろう型板には既に無数の傷跡が刻まれていた。
通常はヤスリを使うのに、サバイバルナイフを使っていれば当然であろう。
コレで作られるメガネでは、完成時点でアフター・ザ・ジェノサイドである。

「店長・・・またクレームっすね。」
新品のフレームをポンポン放り、程よく台無しにしながら台を拭く男が一言。

積山遠耶(せきやま とおや)。一月前に入ったばかりの新入社員だが、一年間仕事もしないで穀を潰していただけのことはあり、自分勝手さも手伝ってこのヴァイオレンスな環境にも比較的なじんでいる。

「積山君・・・『完成したら連絡くれ』って客に『テレパシーで何とかしろ』って言いきった君にそんなこと言われる筋合いはないぞ。」

「アレもなかなか素敵なクレームになったっすねー。」

「まぁ、ウチはクレーム上等が売りみたいなもんだから。・・・おっと、そろそろ時間だな。やるぞ。」

「あい。」

積山と店長が向かい合う。
Gストアー名物・朝のスローガンである。

「トロトロするな!」
「フレーム曲げろ!」
「客を殴れ!」
「愛想笑いなんぞするな!」
「削れ!」「削れ!」「削れ!」「削れ!」「削れ!」
「削れ!」「削れ!」
「加工機にドタマ突っ込んでおっ死ねッ!」

「「サーイエッサー!!!」」


最後のシャウトと同時に店長が投げたヤスリがシャッター開閉ボタンに寸分の違いも無く突き刺さる。

客の流血で錆びたシャッターが軋みながら開いていき、イメージキャラの血まみれで吐血したウサギと、ドアのロゴが露になる。

ようこそ。このイカレたストアーへ(ウェルカム・トゥ・ザ・リアル・ワールド)

そこへいきなり毛色の違うシャウトが。
「しぇきやましゃんッ!!」

「きた・・・。」
「ヤツか・・・・。」

積山と館川が頭を抱える。

声の主はY支店の「職務・始末書書き」。
リチャード・王(ワン)その人であった・・・・。

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