観て、よかった。
男泣きですよ、これは。
今回はリメイクで、オリジナルの
「決断の3時10分」を見ていたから、話として新鮮さはないかなと思ったが、そんなことはなかった。
新しく話を追加して、ふくらませたり、変えたりしていて、飽きずに楽しく観ることができた。
おおまかなストーリーは上記オリジナル作品タイトルの記事を読んでいただければ、と思う。
特に効果的なのが、やはりラストの改変。ドラマティックに変わった。リメイクがオリジナルと同じ終わり方をするのは、オリジナルを知っている観客には、いまひとつ面白くない。本作は、うまく変えていた。
私などは、えっ、こうなるの!? と驚き、まんまと感動させられてしまった。
いちばんグッときたのは、駅へ向かう途中のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)のセリフ。というか告白。ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)は、それを聞いて「わかったよ」と考えを変えるのだが、私は、このダンのセリフに泣けた!
順風満帆な人生で挫折を知らない人間、それなりに人生経験を積んでいない人間、人の苦しみを思いやれない人間には、心に響かないセリフかもしれない。
となれば、悪党団のボスであるウェイドだが、人間味は、ある。
そしてオリジナルと大きく違うのが、ダンの息子の存在感。
オリジナルでは、2人の息子は家に残るので、護送の道中に息子は関わってこない。
だが、今回は長男が父親についてくる。
これがラストに効いてくる。
ラストで息子がその場にいるといないとでは、大違いなのだ。
泣かせてくれるぜ、ほんとに。
男には、やらなきゃいけないときがある。これを痛感。
リメイクとしては素晴らしい出来。傑作だと思う。
ウェイドが捕まるのが、間抜けに見えるかもしれないが、これはオリジナルでも多少、不思議な気はした。
でも、捕まっても、結局は逃げられる、という余裕があるからこそ、と考えればいいだろうか。
ラストだって、ちゃんと馬がついてくるもんね。(このシーンは、かっこよく決まったなー!)
2回も脱走したと言っているし、その気になれば、きっと途中からでも逃げられるんだよ、ヤツは。
ラッセル・クロウは、オリジナルのグレン・フォードと比べると、やはり狂暴(笑)。だが、
それは相手が彼を怒らせたときだけ。母親を侮辱されて許さないところなどは、すっかり私は彼の味方な気分。
クリスチャン・ベイルの悩める演技は、もはや得意分野か!
戦争で片足を失った(義足か?)という設定を新たに加えて、オリジナルのヴァン・へフリンよりも複雑な人間像に。
借金があり、土地を追われそうになっている情けなさで、長男から尊敬されていないあたりも、強く打ち出されている。
それが、ダンが護送の仕事の完遂にこだわる、大きな動機付けになるのも、オリジナルとは一味違う。
エヴァンス家の息子が前面に出たぶん、オリジナルと比べると、奥さんの出番がなくなった。大きな意味でマリリン(・モンローさん)関連だった映画
「ベティ・ペイジ」の
グレッチェン・モルなんだけどなあ。
ピーター・フォンダが出ているのも、オールドファンには、うれしいところか。私には思い入れはない俳優だが。
ベン・フォスター演じる、ウェイドの子分チャーリーの冷徹で独特な個性も見もの。
護送に加わったお医者さんなどとともに、オリジナルにはない魅力だ。
脚本が、うまくできているし、さすが、「17歳のカルテ」(1999年)、「ニューヨークの恋人」(2001年)、「“アイデンティティー”」(2003年)などの秀作を生み出してきたジェームズ・マンゴールド監督! といえる。