3時10分、決断のとき

3:10 TO YUMA
監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 クリスチャン・ベイル  ラッセル・クロウ  ローガン・ラーマン  ベン・フォスター  ピーター・フォンダ  アラン・テュディック  ダラス・ロバーツ  レニー・ロフティン  グレッチェン・モル  ヴィネッサ・ショウ
原作 エルモア・レナード
脚本 ハルステッド・ウェルズ  マイケル・ブラント  デレク・ハース
撮影 フェドン・パパマイケル
編集 マイケル・マカスカー
音楽 マルコ・ベルトラミ
2007年 アメリカ作品 122分
サンディエゴ映画批評家協会賞…特別賞(クリスチャン・ベイル)
ウエスタン・ヘリテイジ賞…ブロンズ・ラングラー
評価☆☆☆☆


観て、よかった。男泣きですよ、これは。

今回はリメイクで、オリジナルの「決断の3時10分」を見ていたから、話として新鮮さはないかなと思ったが、そんなことはなかった。
新しく話を追加して、ふくらませたり、変えたりしていて、飽きずに楽しく観ることができた。
おおまかなストーリーは上記オリジナル作品タイトルの記事を読んでいただければ、と思う。

特に効果的なのが、やはりラストの改変。ドラマティックに変わった。
リメイクがオリジナルと同じ終わり方をするのは、オリジナルを知っている観客には、いまひとつ面白くない。本作は、うまく変えていた。
私などは、えっ、こうなるの!? と驚き、まんまと感動させられてしまった。

いちばんグッときたのは、駅へ向かう途中のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)のセリフ。というか告白。
ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)は、それを聞いて「わかったよ」と考えを変えるのだが、私は、このダンのセリフに泣けた!
順風満帆な人生で挫折を知らない人間、それなりに人生経験を積んでいない人間、人の苦しみを思いやれない人間には、心に響かないセリフかもしれない。
となれば、悪党団のボスであるウェイドだが、人間味は、ある。

そしてオリジナルと大きく違うのが、ダンの息子の存在感。
オリジナルでは、2人の息子は家に残るので、護送の道中に息子は関わってこない。
だが、今回は長男が父親についてくる。
これがラストに効いてくる。
ラストで息子がその場にいるといないとでは、大違いなのだ。
泣かせてくれるぜ、ほんとに。
男には、やらなきゃいけないときがある。これを痛感。

リメイクとしては素晴らしい出来。傑作だと思う。

ウェイドが捕まるのが、間抜けに見えるかもしれないが、これはオリジナルでも多少、不思議な気はした。
でも、捕まっても、結局は逃げられる、という余裕があるからこそ、と考えればいいだろうか。
ラストだって、ちゃんと馬がついてくるもんね。(このシーンは、かっこよく決まったなー!)
2回も脱走したと言っているし、その気になれば、きっと途中からでも逃げられるんだよ、ヤツは。

ラッセル・クロウは、オリジナルのグレン・フォードと比べると、やはり狂暴(笑)。だが、それは相手が彼を怒らせたときだけ。母親を侮辱されて許さないところなどは、すっかり私は彼の味方な気分。
クリスチャン・ベイルの悩める演技は、もはや得意分野か!
戦争で片足を失った(義足か?)という設定を新たに加えて、オリジナルのヴァン・へフリンよりも複雑な人間像に。
借金があり、土地を追われそうになっている情けなさで、長男から尊敬されていないあたりも、強く打ち出されている。
それが、ダンが護送の仕事の完遂にこだわる、大きな動機付けになるのも、オリジナルとは一味違う。

エヴァンス家の息子が前面に出たぶん、オリジナルと比べると、奥さんの出番がなくなった。大きな意味でマリリン(・モンローさん)関連だった映画「ベティ・ペイジ」グレッチェン・モルなんだけどなあ。

ピーター・フォンダが出ているのも、オールドファンには、うれしいところか。私には思い入れはない俳優だが。
ベン・フォスター演じる、ウェイドの子分チャーリーの冷徹で独特な個性も見もの。
護送に加わったお医者さんなどとともに、オリジナルにはない魅力だ。

脚本が、うまくできているし、さすが、「17歳のカルテ」(1999年)、「ニューヨークの恋人」(2001年)、「“アイデンティティー”」(2003年)などの秀作を生み出してきたジェームズ・マンゴールド監督! といえる。




〔2009年8月22日(土) 新宿ピカデリー〕


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