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わが大櫻とその近辺=伊香立・仰木(滋賀県大津市)あたりの四季を映す

秋・10月

木登りする蛇

 2005年10月2日昼下がり、すべての葉が落ち裸になったウメの木を漫然と眺めていたら、異変を感じた。何だということは解らないが、裸になった枝の形がなんとなく変なのだ。我が家のウメはあまり剪定をせず伸び放題にしているので、枝がまさに林立している。でも木の枝というものは上に向かって開いているという印象が漠然とあるのだが、一箇所だけ何か下に向かっているような雰囲気を感じたのだ。で、だんだん注意力が向かっていくとその形がヘビの鎌首のように見えてきた。そして漫然とした気が払われ、じっと目を凝らすと、まさにヘビではないか、と思われてくるのだ。このときはまだ遠く離れていたのと、動きがまったくなかったので、判然とはしなかったが、双眼鏡を取り出して見ると、やはりヘビだった。わが大櫻に生息するシマヘビのうち、体長60センチくらいの子シマヘビのようだ。↓

 ヘビが木登りをするなんて初めて見た。大体が草むらの中や藪の中など姿を隠せる所で、しかも地べたにいるものと思い込んでいたのだ。木登りするヘビが珍しいものか、普通なのかは分からない。しかし映画などでジャングルの大蛇が木の枝からスルスルと降りてきて人を襲うシーンなどが記憶にあるので、ヘビが木に登ることはそんなに珍しくないのかも知れない。でもうっそうと茂ったジャングルの木と違って、このウメには葉が一枚もなく、どこからも見通されるのだ。上空を飛翔するトンビにでも見つかったら、いっぺんに餌食にされるのではないだろうか。常識として頭の中に「ヘビは草むらや藪の中に潜んでいるもの」とあるのは、天敵に狙われるのを避けるため身を隠しているという概念があるからだ。

 天敵に襲われる危険をも顧みず、何のためにこのヘビは木に登っているのだろう。餌をとるためとしか考えられないが、木登りしなければならないほど地べたには餌がないのだろうか。木にやってくる虫は今のところトンボくらいしか考えられない。それともケムシでも食べるのだろうか。そういえばこの前、この子シマヘビはハイビスカスの木の下にも潜んでいた。ハイビスカスの葉もケムシに食べられ、所々に穴が空いている。もしウメの木の葉っぱを食べるケムシを退治してくれるなら、やはりヘビはわが大櫻の守り神だといえる。しかしウメが丸裸になった今はもう手遅れで、もう少し早く木登りをしてもらいたかったものだ。

 この子シマヘビは今年に入って2度ほど見かけたのと同じ個体なのだろうか。一度目は物置の下にスルスルと隠れていくのを見た。二度目はハイビスカスの根元に隠れていた。この時はこちらの気配に気付かなかったようで、ゆったりと散歩する感じだった。華やかハイビスカスの花とグロテスクなヘビとの対比に面白みを感じたし、またこのハイビスカスも小さな苗木で小さなヘビとの組み合わせには幾分可愛さも感じたものだ。これらの子シマヘビは大体同じくらいの大きさなので、多分同じ固体なのだろう。

 わが大櫻の地で見かけるヘビとしては、シマヘビと真っ黒なカラスヘビがいる。カラスヘビは体長1メートルくらい、シマヘビはそれよりも少し大きく、両者ともここ3、4年の目撃証言がある。多分ずっとこの地に生息しているのだろう。しかしこの子シマヘビは今年になってから見かけたものだ。だとするとこの子シマヘビはあの大シマヘビの子供で、この一年のうちに生まれたのだろうか。

 しばらくしてウメの木の子シマヘビは上手に枝から枝へと乗り移り、下へと移動して姿を消した。