キック・アス

KICK-ASS
監督 マシュー・ヴォーン
出演 アーロン・ジョンソン  クロエ・グレース・モレッツ  リンジー・フォンセカ  クリストファー・ミンツ=プラッセ  ニコラス・ケイジ  マーク・ストロング  ソフィー・ウー  クラーク・デューク  エヴァン・ピーターズ  ギャレット・M・ブラウン
原作 マーク・ミラー  ジョン・S・ロミタJr.
脚本 ジェーン・ゴールドマン  マシュー・ヴォーン
撮影 ベン・デイヴィス
編集 ジョン・ハリス  ピエトロ・スカリア  エディ・ハミルトン
音楽 ジョン・マーフィ  ヘンリー・ジャックマン  ユリウス・デ・ヴリーズ  アイラン・エシェケリ
2010年 イギリス・アメリカ作品 117分
好き度☆☆☆☆


本作最大の魅力は、間違いなく、ヒット・ガール!
11歳の女の子が、マスクをかぶって悪人どもを次々にブチ殺していく痛快さ。

こんな、ちっちゃな女の子だと、普通は無力だったり、被害者の側にまわることが多いはず。
そこを反対にしているのが、スカッとする。

キック・アスというのは、セイシュン真っ盛りの、ある男子がマスクマンになったときの名前。
文字どおりの「ケツ蹴り」じゃなくて、「格好いい、クールな」って感じのスラングであるらしい。
彼は何の特殊な力もないけれど、正義のヒーローになったる!とガンバるのだ。その心意気や、よし! しかし…

誰も助けてくれないのに、ひとりで戦う。
みんなが助けてくれれば楽なのに、世の中は良くなるのかもしれないけど。
現実は甘くない。正義のスーパーヒーローは、いない。

理想はあるのに力がない。だったら、理想はどうでも、力はある者とタッグを組めばいいじゃん!?
キック・アスがそう思ったわけではないけれど、ビッグ・ダディとヒット・ガールが彼に接触してきたことから始まって、映画は、最終的にはそんな感じに近くなる。
そう、ビッグ・ダディは復讐に燃えるヤツ、ヒット・ガールはその父に殺戮英才教育を受けた少女、なんてことで、道徳的には、ほめられたものじゃないのだが、そんなことは脇に置いとく。
ふたりの行動は報復であり、それはまた報復を呼ぶ可能性があるもので、決してヒーローの行いではない

笑える場面が多いのがいいけど、逆に、ちょっと嫌なのが残酷な場面が平気で存在しているところ。「刺されて」「クルマにはねられて」とか、リンチもどきのシーンとか。
たとえ映画であっても、私は楽しくない。
物語上、避けられないのであっても、もう少し直接的な表現はしないですむのではないだろうか。
それが今の時代のリアルといってしまえば、それまでのことなのだが。

また、身近なインターネットがストーリーのうえで多用されているのは特徴的なこと。
私たちの生活とは、もはや切っても切り離せないものなんだなあと改めて思わされる。
ヒーローが自分でサイトを持つし。(笑)

キック・アスが「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」でジョン・レノンを演じた人だとは、見終わってからも全然気づかなかった。まるで、そう見えない!
本作の彼は、後輩ヒーローのクルマに乗せてもらって、助手席にちょこんと座っているときの表情なんて、とぼけたふうで笑えてしまうほど。
君が先輩なんでしょ? 威厳みたいなの、まるでナシ!(笑)
あのマスクでの表情ゆえに、なおさら笑えるのかも。
そんな彼氏のドジっぷり。そして、はじめっからの、なんやかんやの試練を乗り越えて、あのラストへ飛翔!

こう、ほら、がんばってみたらさ、彼女だってできるかもしれないし。
いい方向に向かうことだってあるかもしれない。
いっしょけんめい、やったら。
自分にできる範囲のことを、がんばって、やってみたら?

観る前に、監督がマシュー・ヴォーンと聞いて、どうかなと思ったのだ、じつは。
「スターダスト」という、私にとっては、無性に肌に合わない映画を作っていたからだ。
まあ、過去にそれ1本しか彼の映画は見ていなかったわけで、それが偶然合わなかっただけかもしれない。
で、今回は、面白かったから。

それにしても! 
話は戻るが、やっぱり、なんたって、11歳の女の子がバッタバッタと悪人退治をするという衝撃と爽快感とが、映画の中の、ほかの全てに、まさるのではないかと。
彼女は汚い言葉も口にするが、びっくりすることはない。フツーの女の子だって、たとえ、そう思ってても、言わないだけじゃん?
少女がそんなこと言っちゃうほうがクールだったりして。

ヒット・ガールを演じたクロエ・グレース・モレッツが、「ぼくのエリ 200歳の少女」のハリウッド・リメイクでヴァンパイア役をやっている、というので、リメイク版も、がぜん興味がわいてきた。

公開初日、立ち見も出るほどに、なんだか、すごい込みようの映画館。公開館が少ないのもあるだろうけど、どんな、そそる宣伝してたの? ツイッターとかの口コミなのかな?




〔2010年12月18日(土) シネセゾン渋谷〕


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