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修正追試の効果


TOSS兵庫・TOSS亭舎場・法則化神戸亭/水田 孝一

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授業後の子供たちの日記や保護者の反響からは、追試の手ごたえが感じられた。
修正追試の効果と、子どもや保護者の感想を紹介する。



修正追試の効果
@ 子どもの活動をふんだんに取り入れたことにより、「深く考えさせる内容」を保ちつつ、授業参観向きの実践にすることができた。(林氏の授業スタイルでは、活動がほとんど無いので、参観日に行うのは無理がある。)
A 結論(正解)を押しつけずに、「オープンエンド」にしたことで、授業後や、さらに家に帰ってからも、友達や家族と話し合うなど、授業の内容に熱中するすがたが見られた。

追試する際の留意点
@ 林氏ほどではないにしても、やはりこの授業は「語り」が命である。しっかりと練習して、授業に臨むことが必要だ。特に、授業の締めくくりの話は、卒業をひかえた子どもたちへのメッセージでもある。じっくりと語りかけたい。
A 最初の「人間とは何か」や「人間は○○ができる」では、少しふざけた意見を出して、笑いを取ろうとする子もいた。しかし、あせる必要はない。参観日なので、さらに教師が笑いを取ってもよいし、さらっと流してもよいだろう。「カマラ」の話に入れば、写真資料の力で、そんな雰囲気はガラリと変わるので心配ない。 


以下は、翌日、翌々日の学級通信である。

学級通信「こころもよう41」より

昨日の授業参観&学級会に来てくださった方、どうもありがとうございました。「人間とは何か」(カマラとアマラの話)は、毎年いろんな形で行なっている授業です。初めてこの話を知ったのは、大学生のときでした。林竹二先生という方の著書に、この題材を使った授業が出てくるのです。それをぼくなりにアレンジしながら、毎年担任した子どもたちに投げかけている授業です。ぼくがよく使う言葉に、林先生の言葉の受け売りがあります。
「たいがいのことはね。すぐぱーっとわかるなんていうことは、本当にわかったということじゃない。こうじゃないかなぁ、ああじゃないかなぁと、いろいろ迷っているうちに、だんだん考えが落ち着いてくるわけですね。いろんなことが手がかりになって。」(『学校に教育をとりもどすために』より)
学習するということは、知識をつめこむことではなく、自分の脳をフルに働かせて、自分の考えを作ることなのだと、これからも子どもたちに、そして自分自身に課していきたいと思います。

(児童の日記より)
2月19日「討論会」 藤原 愛
今日の授業参観の”カマラとアマラ”は、すごく心に残った。松井さんたちと遊んでいると、前野さんたちに会った。だから、今日の”カマラとアマラ”の討論会を、またひらいた。私と増田さんは「人間といえる」、内間さんと松井さんは「いえない」、前野さんは「きわどい所」。近くで松浦くんたちがサッカーしてて、この話をして、どっちか聞いた。松浦くんとかも迷って、何か「は虫類」とか出てきて、私が「ほ乳類」と言ったら、大塚くんが「そうそう。」と言って、ほ乳類ということで話がまとまった。私はやっぱり、人間であってほしいけど・・・。

2月19日「授業参観」 戸梶 真由美
今日5時間目に、小学校最後の授業参観があった。「人間とは何か」という題だった。私は、人間とは何かと聞かれると、少し迷って、どう言えばいいのか分からない。おおかみに育てられたと聞いて、びっくりした。その子はしゃべれないし、何も持つことができないと聞いて、とてもかわいそうだった。もし私がそんな人だったら、みんなから化け物とごかいされて、とてもいやな気持ちになると思う。カマラは、妹が死んでなみだを一てき流したとき、それは本当にかなしかったんだなと思う。カマラは、いやな気持ちとかそういうのは分からないかも知れないけど、みんながよけたりしたら、少しは分かると思った。本当にかわいそうなお話だった。

2月19日「生きる」 松井 由佳梨
おおかみに育てられた二人は、どんな気持ちだったんだろう。自分が人間の子とは分からず、おおかみになっていたということ、二人とも早く亡くなって、文字も少し覚えたけど、もういない。もっと生きられたら、人間の本能をとりもどし、普通に暮らすことができたのにな・・・。環境が変わることによって、人間はおおかみにもなり、人間とは不思議な生き物だなと思った。二人とも、おおかみの仲間と暮らしてきて、きっと幸せだったと思う。

授業後の全員の感想を、残念ながら紛失してしまった。上の感想は、子供たちが家に帰ってから書いた「日記」である。学校で一度感想を書いたにもかかわらず、帰宅後さらに友達や家の人と話し合ったり、日記に書いたりしている児童がかなりいた。子どもたちの心に残る授業になったようである。

学級通信「こころもよう42」より

「人間は環境の動物である。」
「MAN MAKES HIMSELF.」
よい友達、よい先生、よい教室、そしてよい家庭。よりよい環境は、ただ与えられるものではなく、自分自身で選んでいくものであり、また自分自身で作っていくものである。そうすることで、自分がこうありたいと思う自分に近づいてゆけるのが人間である。自分に妥協せず、理想の自分になりたいと願いながら、これからもがんばってほしいと思う。

(児童の日記より)
2月20日「カマラとアマラ」 細見 洋希
ぼくは、昨日お父さんが帰ってくるのが遅かったので、今日カマラとアマラのことを聞きました。お父さんは、先生の言ったことと同じで、環境によって姿などが変わってしまう、と言っていました。ぼくは、未だにどちらか迷っています。人間が産んだ子どもだけれど、人間ではないようなことをするから、とても迷っています。その答えは、ぼくは両方としか言えません。

(保護者の投稿より)
とてもすばらしい授業でした。先生は、考えさせる授業がとても上手ですね。みんな一生懸命考えている姿がステキでした。「お母さん方はどう思われますか?」って、先生が聞かれたとき、子供たちが一斉にこちらに向けたまなざしの真剣さが忘れられません。「お母さんはどう思ってるの?」って、すがりつくような、助けを求めるようなまなざしにも思えました。我が子の一生懸命授業に取り組む姿を、たいへんうれしく思いながら帰りましたら、「お母さんは、どうしてどちらにも手を挙げなかったの?」と、不満そうに、待ち構えていたように、すぐさま言ってきました。「どちらかと言われたら決められへんけど、あなたの言いたいことはよく分かったし、そこらへんが正解だと思って見ていたよ。一生懸命がんばってたね。」と言ってやりながら、ずいぶん長い間、その話でもちきりになりました。先生のしめくくりのお話が、とってもステキでした。

「こころもよう」いつもご苦労さまです。(中略)今日のすてきな授業、ありがとうございました。息子は何か感じとったみたい。確かに環境は大切です。新しい環境に入っていく子供たち。そこに早くなじみ、自分の道を進んでいってほしいですね。そのためにも、子供に負けないように、温かで安らげる我が家の環境を作っていきたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

保護者の感想(投稿)の方も結構いただいた。かなり好評であった。(「最後の授業参観だから」ということもあるだろうが・・・。)



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