王室同士の結婚式などにともない行われた延々と続く宮廷祝宴は、宮廷オペラの上演でその頂点を迎えます。
そこでは、舞台デザイナー(セノグラファー)、劇場建築家、そして舞台装置技術者が、舞台上に奇想天外なイリュージョンを作り出しました。
彼らは、透視図法を積極的に用い、すばやい舞台転換の方法を発案し、また、多様なからくりを用いることで、上演の間、観客を驚かせ続けました。
その後も、舞台デザインは、建築や、その他の芸術、またその時代の思想と密接な関係を保ちながら、独自の発展を続けます。
舞台上の建築物は、まさに、表層的で、一時的なものです。それは、遠近法を用いた錯覚による虚構の建築/風景として、存在しています。更に言えば、上演中のある場面にのみにしか、その姿は、存在しません。
しかしながら、透視図法が、平面上に、立体の姿を映し出すために用いられる手法であるがゆえに、舞台デザイナーが意図した舞台装置の本来の姿は,2次元の紙の上に紙上の建築として巧妙に表現することが可能でした。そのおかげで我々は、現代においても、その迫力ある姿を知ることができるのです。
ここでは、バロックの時代から19世紀までのステージデザインを中心に、紙上の建築を紹介します。
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