ヒッチコック

HITCHCOCK
監督 サーシャ・ガヴァシ
出演 アンソニー・ホプキンス  ヘレン・ミレン  スカーレット・ヨハンソン  ジェシカ・ビール  トニ・コレット  ダニー・ヒューストン  マイケル・スタールバーグ  ジェームズ・ダーシー  マイケル・ウィンコット
原作 スティーヴン・レベロ
脚本 ジョン・J・マクロクリン
撮影 ジェフ・クローネンウェス
編集 パメラ・マーティン
音楽 ダニー・エルフマン
2012年 アメリカ作品 99分
好き度☆☆☆★


この映画を見ると、「サイコ」の驚くべき大きな、大事なネタが、ひとつ分かってしまう。
だから「サイコ」を未見の方は、「サイコ」を見てから「ヒッチコック」を見る、という順番にしたほうがいいと思う。

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画が好きな私には、興味をもって楽しめた。

しかし、ヒッチ(ヒッチコックのこと。以下同じ)好きでない人が見たら、どうなのか。
感動とか、爽やかとか、泣ける、などという映画ではないので、興味がないと、それほどのものではないかもしれない。
私がサッチャー映画を観たときには、興味がないから、つまらないし、眠くなるし、だったことを思えば、まず「ヒッチ(の映画)に興味があるなら」ということが大きいが、夫婦の形、あり方を見る、ということでもよさそうだ。

以下、ネタばれ含む。

「北北西に進路を取れ」(1959年。大傑作)のヒットのあと、何を次回作にしようか?というあたりから始まって、「サイコ」試写会までの顛末(てんまつ)を描いている。

「サイコ」の殺人者のモデルとなったエド・ゲインが、ヒッチの心のなかに忍び込んで影響を与えているような描写は、おもしろいやり方だと思った。
監督というのは、できれば、脚本の登場人物の心理を把握しているべきだろうから、ヒッチがエド・ゲインと想像のなかで心を通わせていたとしても、おかしくはない。

妻アルマが、仲のいい男の脚本家と共同作業をすることに、嫉妬の想像がどんどん膨らんでいくヒッチ。そういう人だったのか…?
ヒッチが生きていたら、本作のような脚本は許さないんじゃないかな〜。

「メイキング・オブ・『サイコ』」とも言えそう。
「サイコ」の主役ジャネット・リーさんを演じる女優さんが、なんだかスカヨハ(スカーレット・ヨハンソンさん)に似ているなあ、この人誰だ?と考えながら観ていたが、エンドロールでほんとに彼女の名前が出て、びっくりした。(アンソニー・ホプキンスと、ヘレン・ミレンさんが出ていることしか知らなかったのだ。)
スカヨハは主役以外では出演しないと思い込んでいたからだけど、きれいな彼女を見ることができて得した〜。
ヒッチの大好きなブロンド女優。ヒッチが生きていたら、スカヨハを起用した可能性はある。

この映画のなかで、ヒッチは主演女優候補としてグレイス・ケリーさんの名前も出したけど、王妃になったんだからダメよ、と奥さんに言われていた。
ケリーさんは「ダイヤルMを廻せ!」(1954年)、「裏窓」(1954年)、「泥棒成金」(1955年)と、ヒッチ映画3作に続けて出ているんだよね。ヒッチ大のお気に入り。
今回の映画では、彼女の写真も印象的に使われていた。

ジャネット・リーさんの妹役ヴェラ・マイルズを演じたのは、ジェシカ・ビールさん。
秘書(?)のペギーには、トニ・コレットさん。
アンソニー・パーキンスには、ジェームズ・ダーシー。パーキンスの、おどおどした感じを、うまく出していた。

ヒッチとヴェラ・マイルズの関係、検閲とのやりとり、アルマが最終的な編集をしたこと、シャワーシーンの音楽(バーナード・ハーマンの、これまた大傑作)はいらないとヒッチが当初は思っていたこと、などは知らなかったので、(本当のことなら)いい知識になった。

アンソニー・ホプキンスのヒッチは、顔は似ていないが(それは、しょうがない)、雰囲気は頑張ってた。
ヘレン・ミレンさん演じるアルマさんは…アルマさんの顔を知らないから、似ている似ていないの問題ではなく、あいかわらず、上手いよなあ〜と思ってしまう。
普通にやってて上手いように見えるというのが、名優なのではないかと。

冒頭で、ネタがひとつ分かってしまう、と書いたが、それは「主演女優を開始30分で殺してしまう」ということ。
これを知らずに「サイコ」を見れば、すごく驚くだろう。でも知っていたら、ショックが、かなりの部分、なくなってしまう。
ただ、そういえば予告編ですら、すでにバラしていたような気もするな…。




〔2013年4月7日(日) ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋〕


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