山羊座のもとに☆☆☆アルフレッド・ヒッチコックが監督、イングリッド・バーグマンが主演したにもかかわらず、日本では劇場未公開となった一作。
500円DVDで観たのだが、ぼやけ気味の映像。安いDVDだから、期待はしないけどなあと思っていたら、結局、もともと画質はそれほどよくないらしい。
舞台は1800年代のオーストラリア、シドニー。犯罪者としてオーストラリアに送られていた男サム・フラスキー(ジョセフ・コットン)。恋人の彼を追ってきて、出獄後に結婚した女性ヘンリエッタ(バーグマン)。
ヘンリエッタは情緒不安定になっていて、総督の甥(マイケル・ワイルディング)が彼女を助けようと努力する。ヘンリエッタは、彼の姉の友人だったのだ。
かつてのサムは馬の世話係で、レディだったヘンリエッタとは身分の差があり、思わぬところで嫉妬や卑下の心が生まれてくる。
また、フラスキー家の家政婦ミリー(マーガレット・ワイトン)には、ひそかにサムに気があるような素振りも見える。
ヒッチコックの持ち味であるサスペンス風味は、あまりない。家政婦のミリーが、多少「レベッカ」の家政婦ダンヴァース夫人っぽい怖さを発揮するくらい。
基本的にはメロドラマといえるだろう。
ヒッチコックは、とにかくバーグマンを主演に据えることができたから、この作品を撮ったという。
長回し撮影に凝ったようで、夕食場面は7分以上もカットなしで続いた。バーグマンのノーカットの独白も、かなり長かった。
俳優の言うことには耳を貸さない監督であるヒッチコックに対して、バーグマンは長回しはストレスが溜まると不満を言いつづけたという。
トラックバックした「撮影監督の映画批評」様によれば、長回しではあっても「カメラの視点は、実に通常のカット割りのごとく、鮮やかにシフトしていく」のであって、ただ、カットせずに冗漫に撮っているというわけではないよう。
映画は、全体としてセリフが多いだけで退屈という評価を受け、赤字を出した作品となってしまった。
見どころは、やはりバーグマン(ヒッチコック作品では初のカラーでのお目見え)と、名カメラマンのジャック・カーディフの撮影(他に「赤い靴」「黒水仙」、そしてマリリンの「王子と踊子」などの作品がある)。
ジョセフ・コットンが妻に嫉妬するところは、マリリン・ファンの私には、「ナイアガラ」(1952年)を思わせてしまう。
ヒッチコックにしては、少しピントがぼやけたような作品だったのが、劇場未公開の結果を生んだのか。
ではあっても、ヒッチコック映画には、どこか観ていて面白い魅力がある。それが、いい映画監督が持っている力なのだろう。
トラックバックの「プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]」様の記事にあったが、原題は「南回帰線にて」といった程度の意味で、オーストラリアのことを指しているそうだ。
南回帰線は、the Tropic of Capricorn(山羊座の回帰線)という。南回帰線のあるオーストラリアでは、太陽が真上に来るころに、山羊座が夜空に現れているというわけだ。〔2006・7・17(月)〕


焼け石に水☆☆☆フランソワ・オゾン監督(「8人の女たち」)の作品。ホモ関係の話とは知らなかった。原作は故ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が19歳で書いた戯曲。
50歳と20歳の男2人の関係。20歳の若者の元彼女が、彼を訪ねてきて、若者の気持ちは揺れる。そこへ50男が昔付き合っていた元彼(性転換して女性になっている)までやって来た。
「8人の女たち」にも出ているリュディヴィーヌ・サニエが惜しげもなく若々しいヌードを見せて新鮮。4人が並んで踊るシーンがあり、後の「8人の女たち」を思わせた。 
中年男の世慣れた部分や残酷さと、若者の一途さや純真さの対比が浮かび上がる。〔2003・4・5(土)〕


ヤコブへの手紙☆☆☆★信仰するだけでなくて、行動が大切だ。
「ヤコブ」っていうのが、キリストの身近な人じゃなかったかと思って調べたら、なんと「ヤコブの手紙」というのがあった。
その大きな主張(?)が、はじめに挙げた「行いによる」のが大事ということらしく(くわしくないので間違ってたらすいません)、なるほど、この映画では、盲目の牧師は恩赦を与えられた女性に手伝いを求め、相談の手紙に対処する。
どっさりと来ていた手紙が、急に来なくなる理由は、もしかしたら…と思い当たる。
「人の思い(優しさ)(愛)」が、人を支える。
…のであるが、女性が生き長らえるあたりを見ると、もしや神のような存在もあるのかなあとも思うのであった。
長編のつもりで見ていたので、75分という短さには、びっくりした。〔2012・6・10(日)〕


やじきた道中 てれすこ☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2007・11・10(土)〕


ヤッターマン☆☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2009・4・4(土)〕


野望の系列☆☆☆オットー・プレミンジャー監督による政治劇。
キャストが豪華。ヘンリー・フォンダも出ているが脇役だ。
見た映画を全部書くから書くけど、こういう、昔の、あまり知られていない映画をブログに書く人など、あんまりいないんじゃなかろうか。
原作はピューリッツァー賞を受賞した、アレン・ドルーリーの小説。
出演している俳優を挙げると、下記の出演者欄に書いた、ウォルター・ピジョン、チャールズ・ロートン、ドン・マレー、ヘンリー・フォンダの他にも、フランチョット・トーン(大統領役)、ルー・エアーズ(副大統領役)、ジーン・ティアニー、バージェス・メレディス(証人役)、ついでに、ピーター・ローフォードといった面々。
最近の映画ファンには、まったくピンと来ないだろうが、かなり、そうそうたる、オールド映画ファンには嬉しいメンバーなのだ。
とくに、ドン・マレーは、マリリン・モンローさんの「バス停留所」(1956年)で彼女の相手役ボーを演じた俳優。
そして、オットー・プレミンジャーは「帰らざる河」(1954年)の監督。
その、ドン・マレーが委員会の議長という、かなり大事な役だったので、ちょっと嬉しい。
大統領が、空席の国務長官に、レフィングウェル(ヘンリー・フォンダ)という男を推薦する。議会などを舞台にして、シーブ(チャールズ・ロートン)を筆頭とする反対派と、賛成派の駆け引きが始まる。
チャールズ・ロートンの相変わらずの、あなどれない「たぬきじじい」ぶりが楽しい。残念ながら、これが遺作になってしまった。
大統領側、つまり多数派党の中心議員を演じるのは、ウォルター・ピジョン。「わが谷は緑なりき」(1941年)、「ミニヴァー夫人」(1942年)、「禁断の惑星」(1956年)などに出演している名優だ。
共産主義に関係する人物は社会から追われたアメリカ社会の特徴が、ここでもはっきりと出ている。
さらには同性愛差別の問題もあり、人間の自由と平等、人間性の尊重、民主主義という、アメリカ映画が好きそうなテーマ。
タイトル・デザインは、ソウル・バス。「黄金の腕」(1955年)、「七年目の浮気」(1955年)、「大いなる西部」(1958年)、「めまい」(1958年)、「北北西に進路を取れ」(1959年)、「サイコ」(1960年)、「ウエスト・サイド物語」(1961年)など、調べてみたら、あれも?これも?と思うのではないだろうか。この映画のDVDジャケットを見ても、特徴的。
キネマ旬報1965年ベスト10で第3位というのは、いま調べていて知った。(1位は「8 1/2」。2位は「明日に生きる」。どちらもイタリア映画。)
139分で多少長いが、プレミンジャー監督の好みであり得意でもあるだろう、硬派でインパクトのある題材(いま見ると、そうでもないが)で、社会派ドラマとして見応えはある。〔2008・6・8(日)〕


山形スクリーム☆☆★歴史研究会クラブの女子高生たち(と女の先生)が山形へ行って、落ち武者のお化けや「ぞんび」と出会う。…そういう話である。
あらためて思い出してみて、何か感動したり教訓めいたことがあっただろうか。いや、ない!(笑)
ただただ、ばかばかしくてノーテンキに「ぞんび」騒動が繰り広げられるのだ。
それが悪いか? いや、悪くない。
ひつまぶし的に見る、もとい、ひまつぶし的に見るには、よかろう。
「ふたつで充分ですよ、わかってくださいよ」という、あの印象的な、ヘンなセリフ。映画の序盤で登場した「ブレードランナー」のパロディというか真似が、いちばん気が利いていた。
主演の女子コーセーたちの誰かが好きなら、それだけで見る価値があるのは当然である。
または、AKIRAや沢村一樹、竹中直人、はたまた六平直政、生瀬勝久、それとも大穴で、温水洋一が好きなら、見て楽しいかもしれない。
私が萌えたのは、たぶん波瑠さんだと思うが(よく聞く名前ばかりなのだけど、成海さん以外は知らないから、顔と一致しない)、落ち武者と1対1で戦うところ。
こんなにガンバっているのに、萌えるなというほうが無理であろう。
モデルをしているみたいな役の子、桐谷さんは脚が細すぎると思った。第一印象から。
成海さんは、とくに主役っぽくもなく、女子コーセーたちのひとりという印象だった。それでいいのか悪いのか。
ほんのちょっとだけ感動的な場面をもらって得をしたのは、先生役のマイコさん(下の画像の左)だったね。
どこかに「見どころ」があるかなあと思いつつ、結局なかったみたいに、遊んでいるだけで、ゆる〜く終わってしまった。
それが竹中直人風味な、おばかギャグ映画なんだろうなあ。
少なくとも、山形県が県指定の特選映画にしたという話は…聞いていない。(笑)〔2010・10・23(土)〕


山猫☆☆☆TOHOシネマズ みゆき座にて。「午前十時の映画祭」。
ヴィスコンティ監督の名作をほめないとマズイのだろうけれど、かなり眠かった! はじめは。
ずーっと以前に観たことがあるが、もう内容を忘れていた。
イタリア語の完全復元版で上映。187分。
ひとつのシーンが長い、と感じたことが数回。何が起きるでもないのに、そのシーンを映している時間が余分にある、という感じ。
ツイッターで「悠揚」という言葉を使ったが、それは、誉め言葉にも、その逆にもなりうる。
見るときの気分の問題もあるかもしれない。
お年寄りらしい役柄のバート・ランカスターが、実際は50歳に届いていないと知って、びっくり。メイクしてたんですね?
西部劇に出たり、空中ブランコしたりのアクション派かと思えば、こういう文芸ものにも出演。これも、びっくりするよね。
アラン・ドロンは27歳くらい。出番が思ったより多い。
クラウディア・カルディナーレ、24歳くらい。ドロンと恋人になるので、一緒のショットがたくさん。
私の大好きな「ブーべの恋人」と同じ年の製作で、「山猫」のほうを先に撮ったらしいが、「ブーべの恋人」のほうが、きれいだと思うなあ。
舞踏会の場面は、えんえんと続く。このときは眠くなかった。
ランカスター演じる公爵は、老いを感じ、死を見つめる。
カルディナーレとドロンのカップルや、若い娘たち、楽しみに興じる客たちを横目にしながら。
新興勢力の台頭、時代の担い手の交代、貴族の没落…。
山猫と獅子は退き、ジャッカルと羊の時代が来る…。
犬は人につき、猫は家につく、という。公爵が山猫ならば、彼は時代の波には乗らず、この家を離れず、この家と滅びていくのだろうか。〔2013・2・3(日)〕


やわらかい手☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2007・12・9(日)〕


柔らかい肌☆☆☆★フランソワーズ・ドルレアックさん(カトリーヌ・ドヌーヴさんの姉)扮するスチュワーデスと不倫する男の行く末。
文芸評論家のピエール(ジャン・ドザイー)は、機内で見かけたスチュワーデスのニコル(フランソワーズ・ドルレアック)を気にかける。
滞在先のリスボンで彼女と不倫関係になり、今度は、ランスで行なわれる講演旅行に彼女を誘うが…。
ネット上の記事をいろいろ見てみると、アルフレッド・ヒッチコック監督を意識した作りと言われている。
そういうところは、あるかも。
まずは、美女が出ているし!
すぐ近くにいる彼女との時間を過ごしたいのに、仕事がらみで抜け出せずに、あせる一連のシーン。
また、妻に電話に出てほしいのに、ささいなことで一足違いになり、重大な結果を招いてしまうシーンなどの「サスペンス」は上々。
フランソワーズ・ドルレアックさんは、カトリーヌ・ドヌーヴさんの1歳上の姉で、1967年に自動車事故で亡くなっている。25歳の若さだった。
出演本数が少ないこともあるが、姉妹で共演した「ロシュフォールの恋人たち」(1967年)と、ほかには「袋小路」(1965年)しか、彼女の作品は見たことがなかった。
目もと、男っぽく見えるときもある顔立ち(けなしているわけじゃない)など…妹と似ている雰囲気。早くに亡くなったのが残念。
新聞の三面記事からヒントを得て書かれた脚本のようだが、とにかくねえ、不倫は良くないです。
この映画は、根本的には男の浮気心が悪い。ふらふらしてるから。対する女は、やっぱり、結局は現実的だ。
「タカナワ・プリンス・ホテル」、「フジタ」の絵という、日本に関係するセリフが出てくる。〔2012・10・27(土)〕


ヤング≒アダルト☆☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2012・2・26(日)〕


ヤンヤン 夏の想い出☆☆☆★ヤンヤン歌うスタジオじゃないよ。(ふ、古い…)
台北に住む家族の日常を淡々と描く。カンヌ映画祭の監督賞などを受賞。
お父さんが「NJ」と呼ばれてた。わたしの仲間か?
一成尾形(こう字幕に書かれている)が、そのNJお父さんと商談するのに、英語を喋る。ゆっくりで簡単な英語。聞いててもよく分かった。おお、こんな簡単な英語で会話できてんじゃん、って感じね。
日本のシーンは、都内の駅のホームや、つるやホテル(伊豆のかなあ?)、等々力不動尊(東京・世田谷)、満願寺(長野?)などが舞台になる。
台湾と日本の共同製作だからね。〔2002・6・8(土)〕


ユー・ガット・メール☆☆☆★すっと気持ちよく観れる。流れる音楽も心地よい。そしてニューヨークの風景…。吹き替えで観たが、メグ・ライアンの声に違和感を覚えた。声優さんには申し訳ないが、メグちゃんの本当の声をいっぱい字幕映画で聞いてるから、「違う」と思ってしまうのだろうなあ。〔2001・9・29(土)〕


夕暮れのとき☆☆☆銀行強盗で奪われた35万ドルをめぐる、男たちの争い。
強盗実行犯の2人組に見つかり、金のありかを教えろと責め立てられるジェームズ(アルド・レイ)。じつは、ある経緯(いきさつ)によって、現金の入ったカバンが当時、彼の手に入ったのだが…。
バーで知り合ったマリー(アン・バンクロフト)も、ジェームズとともに追われることになる。
追われながらも、事態を解決するために事件現場へ向かおうとする2人。
劇場未公開、初放送。WOWOWフィルム・ノワール特集の1本。
脚色が、スターリング・シリファント。のちに、「夜の大捜査線」(1967年)、「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)、「タワーリング・インフェルノ」(1974年)などを担当していて、私にはおなじみなので、その名前を見たときは、おおっ!と思ったよ。
撮影は、バーネット・ガフィ。「地上(ここ)より永遠に」(1953年)でアカデミー賞をとっている。
オープニングで、タイトルが出たときに歌が始まったのには、ちょっとびっくり。
アルド・レイは、マッチョっぽいんだけど、やさしくもあり。
強盗の2人組は、それぞれの性格の違いを出していて、それがラストにも効いてくる。
強盗たちとは別に、ジェームズを見張る男もいて、これは刑事なのかなあと思ったら…。
フィルム・ノワールとは、1940年代から1950年代の、犯罪を扱ったモノクロ映画、という感じに言ってしまっていいのか、よく分からないが。当たらずとも遠からじ?
感覚的には、なんとなく分かるけど。
けっこう好きなジャンルではある。〔2009・10・25(日)〕


遊星からの物体X ファーストコンタクト☆☆☆★エイリアンが人間に化けていて、それが誰なのかわからないというのは怖い。
古生物学者ケイト(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)が南極に呼ばれる。宇宙船が見つかり、エイリアンの氷漬けが…!
学者が未知の生き物を研究したいのは分かるが、映画のなかでは、だいたい、そんなことしてると無事に済んだためしがない。
当然、エイリアンが復活して、人々を恐怖のどん底に。
対処法としては焼き殺すだけで、とってもシンプル。
生物の中に潜んで、その生物になりすまし、隙あらば襲ってくるというから、たちが悪い。
エイリアンが、人の顔を持ちながら怪物化する姿は、おぞましくて気持ちわるい。触手みたいなのを振り回したり、人の顔にくっついて同化しようとしたり。
いったい誰がエイリアンなのか? というサスペンスと攻防戦を基本に飽きさせず、気持ちわるい変身と、その後の姿が、子どもが見たらトラウマになりそうなくらい?
男たちの人数がわりと多くて、見ていて、誰が何の役の人なのか、よく分からなかったりした。はじめに、ちゃんと把握していない自分が悪いのかもね。
主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドさんは、ほかに「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」、「デス・プルーフ in グラインドハウス」などにも出ている。
本作は、「遊星からの物体X」(1982年)の前日譚なので、「…ファーストコンタクト」というタイトルが加えられている。
同じ原作小説をもとに、1951年、ハワード・ホークス製作で「遊星よりの物体X」という作品が作られている。たしか、映画雑誌「ロードショー」でSF映画特集に取り上げられていて、私はその作品タイトルを知り、興味をもった映画なのである。〔2013・8・28(水)〕


夕なぎ☆☆★ロミー・シュナイダー、イブ・モンタン、サミー・フレイの三角関係。へんに調子のいい音楽で違和感あり。モンタンの役は、感情が激しすぎ、暴力人間だ。そういうのを抑えられないのが悲しい人間なんだろうなあ。
ロミーの顔、なんとなくマリリンに似ている瞬間があるかも。美人顔ってどこか似てるんだろうか。(気のせいっていうだろうね、みんな)
イザベル・ユペールが出ていたって後で知ったが、あの娘の役かな…。〔2003・10・12(日)〕


夕凪の街 桜の国☆☆☆☆原子爆弾がもたらした悲惨さを伝えていくのは、唯一の被爆国である日本にしかできないこと。
この映画が、より多くの人に原爆の罪を知らせてくれるように願う。
ほんとうは、原爆投下に関わったアメリカ人たちにも見てほしいところ。原爆を落とした結果がどうなるのかは、落とした関係者にもよく分からないところがあったかもしれず、その点では多少の責めは免れる可能性はある(かもしれない)。
見てもらおうにも、当事者のなかには老齢などで亡くなっている人もいるはずだし…。
戦争だから、しょうがなかった、で終わる問題ではない。
そして私を含めて、原爆を知らない人たちにも語り継ぐことは必要。未来に同じ悲劇を生まないためにも。
私は漫画の原作(作者は、こうの史代。平成16年度文化庁メディア芸術賞マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞)を知らず、内容をほとんど知らないままに映画を見た。
前半の物語は、終戦から13年後の広島が舞台で、ヒロインは皆美(麻生久美子)。
彼女は被爆したものの、生き残った。同じ会社の男性に、ほのかな恋心を抱いているが…。
麻生さんについては、私は「時効警察」でのコミカルな演技しか記憶になく、この映画で見せたような、しっとりした演技は初めて拝見したが、とてもよかった。
演出の、まっすぐな誠実さもあったせいか、泣けた…。
これほど胸にグワンときて嗚咽するほどに泣いたのは今年いちばんかも。
静かながら痛烈な、原爆を落とした人間に対する言葉が、皆美のセリフにあり、それは忘れられない。
この前半だけでも素晴らしい。
後半は現代の2007年に舞台が移る。ヒロインは七海(田中麗奈)。
彼女の父親(堺正章)が皆美の弟、というつながりになる。
最近に至るまで、被爆の影響は終わっていない、ということを教えてくれる。
田中さんと、友人役の中越典子さんの演技で、多少、今風な明るさが加わって、ほっとするところもある。
皆美と七海は、お互いに会ったことがないが、おばさん、めい、という関係。
時代の違う2人の女性に、共通するものと違うもの、映画はこれを対比させてもいる。
今を生きる七海が、皆美のことを改めて心に思うことは、きっと、すごく大切な、温かいものなのだろうなと感じる。
この映画、ぜひ見てください。原爆の、戦争の、恐ろしさを知るために、忘れないために。〔2008・12・14(日)〕


幽霊紐育を歩く☆☆☆★前にも映画感想の記事で書いた漢字だけど、「紐育」は「ニューヨーク」と読みます。
イヴリン・キース嬢が出ていると知って観た作品。そう、彼女は、マリリンの映画「七年目の浮気」で、マリリンにムズムズっとする男の妻の役を演じた女優さんだ。
これは、彼女が20歳そこそこの時の映画。
マリリンがらみの動機で観たのだけれど、なかなか面白くて、ユーモアと温かみがある古き良きアメリカ映画、というべきものだった。
飛行機事故で死んだボクサー。間違いで死んだことが分かって生き返ることになるが、時すでに遅く、体は火葬になってしまっていた。そこで、代わりの体を探すことになる。
私は観ていないのだが、ウォーレン・ビーティが監督・主演した「天国から来たチャンピオン」(1978年)は、この作品のリメイクなのだそうだ。
自分のいない現世みたいな話を物語の中にもってくるパターンは他の映画にもある。フランク・キャプラ監督の名作「素晴らしき哉、人生」(1946年)もそうだが、自分の人生を、ワンクッションおいて客観的に見ることができるから、しみじみと、いいストーリーになりやすいのかもしれない。
天国の係官役、クロード・レインズの落ちついて品のあるダンディぶりが、じつに、ぴたりとハマっている。
レインズといえば、「カサブランカ」(1942年)の警察署長。(「カサブランカ」、今夜BSで放送ですね。)
原作のハリー・シーガルは、マリリンが端役で出た「モンキー・ビジネス」の原案も手がけている。うーむ、マリリンつながり、ありますねー。(無理矢理か?)
調べてみて、いちばん驚いたのは、主演のロバート・モンゴメリーの娘が、テレビシリーズ「奥様は魔女」で主役のサマンサを演じたエリザベス・モンゴメリーさんだったこと! ロバート・モンゴメリーという俳優自体をよく知らなかったので、そういう血縁関係も今まで知らなかった。
うん、父娘、顔が似ているかもしれない。
ラストが感動的で素晴らしくて、満足。よきアメリカ映画たるもの、こうこなくっちゃ!
とくに、このシーンのイヴリン・キース嬢は素敵です。
アカデミー賞で原案賞、脚本賞を受賞。〔2007・1・27(土)〕


誘惑のアフロディーテ☆☆☆ミラ・ソルヴィノ嬢を見たいだけのために観た。彼女は本作で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの助演女優賞を取った。
娼婦役の彼女、話し方をわざと高めにして、頭がよくないイメージにしているような気がする。
ミラにとって、「ノーマ・ジーンとマリリン」の前年の映画になる。
監督・主演はウディ・アレン。私は、この人、頭が良すぎて才気走りすぎの印象があって、あまり好きじゃない。偏見だと分かってるさ。その証拠に、この映画も嫌いじゃなかった。
ギリシャ悲劇の出演者と、物語の主人公たちが、クロスオーバーして登場するのが面白いアイデア。〔2004・3・20(土)〕


雪に願うこと☆☆☆★「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2006・5・21(日)〕


雪之丞変化☆☆☆★若尾文子さん見たさである。   
「ゆきのじょうへんか」と読んじゃダメですよ。「へんげ」です。
長谷川一夫の三百本記念映画? 女形の役? おっさんじゃないかよ…。
と見ていたら、観客の若尾文子さん、おっさんに惚れちまった。
映画は、この女形の仇討の話で、観客の中に初めて親のかたきの姿を見るわけです。その目的のために、若尾さんの恋心を利用しようということに。
ついさっき(映画を見てから5日後)まで、悪党の闇太郎が長谷川一夫の二役だとは知らなかった。
勝新太郎が出ていたというから、闇太郎は勝だったのかなー、なんて考えていたのだが。(苦笑)
市川雷蔵の名前もあって、昼太郎という役らしいので、これは、闇太郎をライバル視していた、あの人か、とわかった。(映画を見た後でね。)
顔を知らないと、こういうことになる。
山本富士子さんが江戸っ子の姉御肌の盗っ人で面白かった。かっこいい。
ちょっと卑屈な剣客が船越英二なのか〜! これも見ているうちは(当然)気づかなかったけども。
中村鴈治郎は味がある。
BGMがジャズっぽく、影をうまく使う映像の工夫も。
語りが徳川夢声だったり。
なにしろ、やっぱり、若尾文子さんが好きです!〔2015・6・14(日)〕


雪夫人絵図☆☆★NHK-BSで放送した溝口健二監督特集を、何本か録画しておいた。しばらくは、溝口監督作品の感想文が多くなる。
「週刊新潮」掲載の風俗小説の映画化で、原作は舟橋聖一。
脚本は、依田義賢(溝口作品の脚本家、また「スター・ウォーズ」シリーズのヨーダのモデル?として有名)、音楽は、早坂文雄(黒澤明監督作品の音楽も多く担当している)。
旧華族の娘、雪(木暮実千代)の夫・直之(柳永二郎)は婿養子。
直之は粗暴なうえ、京都の妾(めかけ)の綾子(浜田百合子)の元に入り浸り。雪は耐える日々が続く。
雪は旅館を始める。そこへ夫が綾子を連れてやってきて、強引に宴会に付き合わされたりするのだが…
雪の中の「女」は、直之に求められると断れない。
上品なお嬢様の見かけの裏には、男と離れられない情熱が隠されているのである!
うーん、女の性(さが)ですか。
無理やり、くちづけで酒を飲ませようとする夫。夫に抵抗できない雪が、壁にもたれかかり、くずおれると、壁に飾ってあった花がポトリと落ちる。
ここは印象的だった。
雪に思いを寄せる、琴の師匠(上原謙)が情けないヤツで、雪に対して「強くなれ」と言うだけ。雪の夫に何か意見を言うときも、酔っ払わなければ、言うことができない気の弱さ。
なんだか、運命に翻弄されるしかない女の悲しさ、みたいな話。どうにもならないものなんでしょうか。
直之の取り巻きの男、あとで調べたら、山村聡さん。若いー!(当たり前だけど) びっくり。
奉公に上がる女性を演じた久我美子さんが、きれい!〔2006・9・17(日)〕


ユナイテッド93☆☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2006・8・26(土)〕


☆☆☆★よく言えば、詩的で幻想的。
悪く言えば、エロジジイの妄執話。(笑)
キム・ギドク監督の映画を初めて見た。
よく、特徴がある監督だ、鬼才だ、という話を聞くので楽しみにしていたが、まさに!
変わってる。けど、好きか嫌いかと聞かれたら、好きだ。
第一、女の子が、なんともいえず美少女。(←それかい!)
石田ゆり子似?(自信なし)
主演の女の子と爺さんは、しゃべらない。
笑ったりはするが、言葉は話さない。女の子が爺さんの耳に口をつけて、ひそひそやってるから、話せないわけではないはず。
この、セリフのなさが、「映像で見せる」という映画の一面を輝かせている。
爺さんは、拾ってきた女の子を船の上で育てて、やがては結婚しようとしている。
端から見れば非人道的にも映るが、爺さん、惚れまくってる。
外から来た釣り人、外の世界に、心を引かれはじめる女の子。
独占欲を見せる爺さんに反発する女の子。
なんとも不思議な関係だ。たらいで裸になった女の子を洗う爺さん、それを許す女の子、ときたら…これは、もう本当の話じゃないでしょう。
占いと称して、ブランコをする女の子の向こうにある的に向けて弓を射る爺さん。笑みをたたえる女の子。
矢は女の子をかすめて的へ。何のために、こんな危ないことをするのか、説明はない。
でも、印象的な絵になる。
最後には、夢か幻想にかすめて、この可憐な少女をよがらせ、女にしてしまう、ギドクの脚本。
エロジジイの執念、おそろしや。いや、素晴らしや。愛するとは命をかけること。
何がどうだ、というより、感じてみるのがいいんじゃないの?
「弓」の英語タイトルは、THE BOW。ボーといっても私ではありませんので。〔2008・3・23(日)〕


ユメ十夜☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2007・2・4(日)〕


ゆれる☆☆☆★「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2007・1・13(土)〕


妖怪大戦争☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2005・8・14(日)〕


夜風の匂い☆カトリーヌ・ドヌーブが出ているのに…。つまらなさすぎる。男2人が赤い車に乗ってドライブしてるばっかりみたいな印象。なんの話だ? 
人妻の愛の苦悩の話と解説にあったが、ドヌーブは最初と途中と最後に少し出るだけ。赤い車のほうが印象的じゃないか。
ドヌーブがラブコールを送って出演したという鬼才フィリップ・ガレル監督なのだが、つまらんものを作ったもんだ。眠くなりっぱなし、一部記憶が途切れている。今年のワースト候補のひとつ。〔2003・4・5(土)〕


善き人のためのソナタ☆☆☆年末あたりから、映画系のブロガーさんたちに恒例ともいえそうな「昨年度のベスト映画」的な記事が、さまざまに書かれる。(私も含めて。)
いろいろな「マイ・ベスト」を拝見するのは、楽しいものだ。
私が未見の映画で、多くの方が昨年度の上位に挙げていた中の1本が、この「善き人のためのソナタ」だった。
アカデミー賞で外国語映画賞をとるなど、受賞多数。
というわけで、レンタルしてきて鑑賞。
ドイツが東西に分かれていた頃。舞台は東ドイツ。
国民は、秘密警察である国家保安省(シュタージ)による監視のもとにあった。
主人公はシュタージに属する大尉。彼は、劇作家と、その恋人の舞台女優を監視するために、劇作家の家を盗聴する。
だが、盗聴を続けるうちに、大尉は彼らに同調していき…という話。
ベートーベンの「熱情ソナタ」をレーニンが批判した、この曲を本気で聴いたら革命はできない、悪人にはなれない、と。
これは劇作家が「熱情ソナタ」を弾きながら恋人に語った話で、ここからタイトルがついたのだと思うが、盗聴していた大尉も、当然この曲を聴いていた。とすると、大尉も悪人にはなれないのか? 象徴的な出来事だ。
大尉が2人に同調していった理由が、いまひとつ、はっきりしないが、このソナタを大きな理由に据えたわけだろうか。
理由は、彼女への恋心かな、と思えたりもするが。
盗聴は怖いことだ。思想をチェックされる恐ろしさもある。
わずか20数年前に、こういう社会が存在したことも恐ろしいが、いまでも似たようなことがないとは限らないかもしれず、それを考えると怖い。
ラストが素晴らしいという意見が多い。私も観ていて、こう来るか、と感動はした。
だけど考えてみると、大尉がそれ(ネタばれなので書きません)を見つけたのは、偶然にすぎないわけで、気づかないことだって大いにありうる。
劇作家のほうは、それでよかったのか、本当に、いいのかなあ? と疑問は残る。
となると、ドラマティックに出来すぎたラストという気もしてくるのだ。
どうも最近、私は大勢と意見が異なる場合が多いみたいで、その点も、いいのか、これで? と思ってしまうのであった。ま、いいね。
ドナース監督は、リチャード・アッテンボローに師事したという。アッテンボローはイギリスの俳優・監督。私としては、俳優では「大脱走」(1963年)、「ジュラシック・パーク」(1993年)などが印象的。監督では「遠すぎた橋」(1977年)、「コーラスライン」(1985年)など。
これが初めて作った長編映画ということで、大きな評価を得て、今後はどうなるでしょうね…。〔2008・1・27(日)〕


夜霧の恋人たち☆☆★邦題は内容と、ほぼ関係ない。コメディ風味ですか?
「大人は判ってくれない」、「二十歳の恋/アントワーヌとコレット」に続くアントワーヌ・ドワネルもの3作目。
軍隊不適合で除隊したアントワーヌ。さっそく女を買いに行く。そういう金は持ってるんだ。
ガールフレンドの家で両親に会って、偶然、ホテルの夜番の仕事を紹介してもらう。
彼女の両親とも仲がいい、という話だと、前作のコレット一家かと思ったら、違う女の子が出てきて、あれっということに。
女好きで、そこだけはマメなアントワーヌ。
次は探偵社に雇われ、靴店に潜入捜査。
社長の奥さんに惚れてしまって大騒ぎ。
別れたあと、またまた女を買って。アホか。
ラストは、ガールフレンドといっしょになろうかというタイミングで、彼女に愛の告白をする、別の「思い込み男」が登場。ギャグ?
こんなフツーにダメダメなヤツを通して、世間を描くみたいな意義はわかるが、私には、あんまりおもしろくない。〔2012・10・6(土)〕


予告犯☆☆☆「映画感想/書くのは私だ」に感想あり。〔2015・6・21(日)〕


世にも怪奇な物語☆☆☆★エドガー・アラン・ポーの原作3本を、ロジェ・バディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3人が監督したオムニバス。
バディム編は、奥さんのジェーン・フォンダをいかに魅力的に撮るかがメインのよう。ジェーンと弟のピーターとの共演。ラストが、え、これで終わり?と、ちょっと思う。
マル編は、ウィリアム・ウィルソンの話。自分と同じ人間がいる。いわゆるドッペルゲンガーですね。アラン・ドロンが冷酷な悪い奴を好演。子ども時代の俳優もドロンと似た風貌で、冷酷で、なかなかよかった。すごく真面目に作ったなあという印象。
フェリーニ編は、もしも、この1本だけを観ても充分過ぎる価値がある傑作。酒や薬で、主人公の意識が朦朧としているせいもあるかもしれないが、イメージの奔放さに目を見張る。画像が、奇妙に、ユーモラスに、豪華に、次から次へと飛び回る。絵の重ね方の編集がうまいのだ。たとえば、サーカス、ピエロ、大いなるホラ話を観ているような思いを抱かせる。
スポーツカーに乗ってからの疾走感、行き止まりにぶつかる閉塞感。
そして、そして、悪魔たる少女の、髪の間から覗く半分ほどの顔の怖さといったら! こんなに少女を怖く見せた映画は他に知らない。たぶん、普通に映せば可愛い少女なのに違いないのだが、この怖さは、監督の力量以外の何ものでもないだろう。最高の、幻想と恐怖の物語である。
IMDbで調べると、少女の名前は、Marina Yaru といい、この映画しか出ていないようだ。〔2004・5・22(土)〕


夜の女たち☆☆☆監督の名前が画面に出たとき、溝口監督と並んで、あと2人の名前があった。あれ、3人で監督したのかなと思ったが、調べてみると助監督が2人いるようなので、揃って名前を出したのか。この作品を作るのに、かなり助監督の力があったのだろうか。
簡単に書いておく。
主演は田中絹代さん。
夫が戦争から帰らず、病気の赤ちゃんを抱えて、戦後の貧乏暮らしを送るなか、生活が苦しければ、妾(めかけ)になる手もあるよ、という誘いを頑として断るような女だったが、さまざまな不幸が彼女を襲い、やがて…。
ラストで、田中さんが夜の女の商売から足を洗おうとする場面は、仲間の女たちの悲しみも加えて、見ている者に訴えてくる。
ここ最近見ている溝口作品は、ラストで女の悲しみを大きく出したところで終わるものが多い。不良、芸妓、夜の女…。
夜の女たちが捕まえられると、病院のような施設で検査を受けることになる、ということを初めて知った。
生活を立て直すための婦人ホームのような場所も興味深かった。ここの院長、神父さんか何かのように、典型的に、いい人すぎる気も。お産まで手がけていたから、お医者さんなのか?
貞淑な妻から、妾、さらには夜の女へと変わっていく田中さん。その落差の演技には、さすが、女優やのう、と感心するのであった。
初公開時よりフィルムが2分欠落しているらしい。〔2008・11・30(日)〕


夜の罠☆☆☆若尾さん、海外ミステリに挑む!?
原作は、コーネル・ウールリッチの「黒い天使」。ハードボイルド的なのかなと予想したが、まあまあ的は外れなかった。
「若尾文子映画祭 青春」にて。角川シネマ新宿。
夫の無罪を信じて、あやしいと目星をつけた男4人について、自分ひとりで(!)調べていくという、根性のある奥様役。
日雇い労働者がたむろする山谷(さんや)のアブナイ中へ乗り込んでいって、しかも男と、ひとつ部屋に入る!
ヤバそうな医者に会って、ヤバそうな仕事をすることになる!
ヤーさんに捕まる!
危険というものを知らないのか!? なんていうのは野暮。こういう娯楽映画なんだもの。
あんまり深みのない、ストレートなものだけど、それはそれで楽しい。〔2015・7・28(火)〕


夜への長い旅路☆☆☆ノーベル賞作家ユージン・オニールの、死後に発表されて4度目のピュリッツァー賞をとった原作。監督はシドニー・ルメット、出演は5人だけ、キャサリン・ヘプバーン、ラルフ・リチャードソン、ジェースン・ロバーズ、ディーン・ストックウェル、ジーン・バー。作家ユージン・オニールの自伝的作品。日本でも舞台で上演されたことがある。麻薬中毒になった母親を中心にした家族の物語で、その愛憎の濃密さは、すさまじい。キャサリン・ヘプバーン他の演技もすごいものでした。1962年の映画だが、テレビ映画情報誌では、これまで未公開となっていた。地味で重すぎるということだったのだろうね。〔2001・10・8(月)〕


歓びの毒牙(きば)☆☆☆ダリオ・アルジェントの監督デビュー作だったんだ。
殺人未遂事件を目撃した男が、自ら事件の謎を追う。
撮影がヴィットリオ・ストラーロ、音楽がエンニオ・モリコーネと、いまから見ると豪華。
男の彼女役で、名前は聞いたことがあるスージー・ケンドールさん。
かわいらしいブロンド。スーザン・ジョージさんとかに似ているかもしれない。
殺人鬼に、部屋に侵入されそうになるシーンが彼女の見せ場のひとつか。
「ジャーロ」という言葉を、アルジェント作品の評や解説でよく目にするので調べてみた。
以前、同監督作の「ジャーロ」を見たときには、ジャーロが何たるかを知らずにいたのだが、本作などは、まさにジャーロ要素がいっぱいじゃないですか。説明は省略します。
デビュー作から、傾向は決まっていたんですねえ。〔2016・1・17(日)〕


歓びを歌にのせて☆☆☆☆★この映画の、いい評価を目にしたのがきっかけで、観に行ってみた。コーラスを扱った映画だという以外、内容はほとんど知らずに。音楽に関わる映画は、けっこう好きなので、その面では、ちょっと期待はできた。
好きな女優さんや監督の作品であるわけでもない。気にいるかどうか。まったくの勘に頼ったわけである。
その結果は…素晴らしかった!!
スウェーデン映画というと、イングマル・ベルイマン監督の映画くらいしか観たことがない。
まず、雪に覆われた村に主人公がやってくるところから、心に迫るものがあった。風景が、なにか、いいなあと思ったのだ。こんなところに住んでみたいような。寒いだろうけど。田舎暮らしに憧れているのかもしれないな、自分。
主人公は高名な指揮者のダニエル・ダレウス。彼は心臓を悪くして、生まれ故郷に戻ってきたのだ。静かに暮らそうと考えていた彼だが、聖歌隊の指導を頼まれる。
映画は、再び音楽に情熱を傾けるようになるダニエルの姿、そして、村人たちの、さまざまな人生を浮かび上がらせる。
まったく甘くない映画。コーラスの話だから楽しい、嬉しいお話なのだろうと思ったら大間違い。
確かに、歌う歓びは、ある。それは感動的な響きをもって奏でられる。とくに、ガブリエラ役のヘレン・ヒョホルムは歌手であり、彼女のソロの場面は素晴らしい。だが、映画はそれが主題ではないのだ。コーラスの場面を期待して観に行くと、不満が残る可能性ありだ。
人間は、いかに生きるのか、いかに死ぬ(べきな)のか、そのひとつの生き方を見せてもらったような気がする。だからといって、決して優等生的、模範的な生き方をしていたというのではない。落ち込んだり、喜んだり、迷いながら、それでも進むしかないのだ。
主人公ばかりか、村人たちそれぞれの人生も、辛いこと、苦しいことが、いっぱいだ。嫉妬があり、暴力があり、いじめがあり…。
コーラスは、そんな負の気持ちを、一時でも忘れさせ、心を歓びで満たす。
恋することに積極的な娘レナを演じるフリーダ・ハルグレンがいい。心臓がボロボロで健康に不安をもつダニエルに対して、生きるエネルギーを与えるがごとく、明るく咲いた花のようだ。
エンディングも甘くない。もしもアメリカ映画なら、こんな終わり方をするだろうかと、ふと、思った。
これが幸せなのか、そうでもないのか、不幸なのか、次に観るときには、また違う感慨を抱くのかもしれない。
「どうして好きって分かる?」
「顔を見ると幸せ」
「それから?」
「いつも想ってる」
「それから?」
「一緒にいると幸せを感じる」
〔2005・12・25(日)〕


40歳の童貞男☆☆☆★これは、拾い物。話のテンポも軽快で楽しめた。
原題は「40歳のバージン」。素直に邦題にしたわけだが、「童貞男」という日本語になると、映画に対する先入観として、いいのか悪いのか…。
バージン(virgin)という英語は、女性だけでなくて男性にも同じ意味で使えるのが面白いところ。
その、40歳のバージンである主役のスティーヴ・カレルは、電器店に勤めている。彼を取り巻く同僚3人が、とても上手に描写されているのがいい。
さらには、少し年配で怖そうな女性店長(ところが意外なことに…)、中東系っぽい店員たちなども、おもしろく、いい味を出している。
そして、40歳の童貞男の恋の相手が、それなりに年齢のいった(なにしろ、娘も孫もいるという「おばあちゃん」である!)特別に美人でもない(ごめんね)キャサリン・キーナー。しかし! これがリアル感もあるし、魅力的なんだなー。いいよ、キャサリン。
思い起こせば、彼女ってば「カポーティ」に出てたときに、私に田中真紀子と間違われた人じゃないですか! 今回は、そうは見えなかったです。それが普通か。
彼女が童貞男の家でエロビデオを見つけた(じつは、友人に押し付けられたもの)場面があるけど、男がエロビデオを持っていても変に思わないでほしいな。
電器店で、Panasonic(パナソニック)の箱が目立っていたのも印象にある。日本製電器製品、さすがだ!
脱毛サロン(?)の担当店員が日本人で、ミカさんでした。胸毛にテープを貼って引き剥がして脱毛するという、本当にサロンでこんなことしてるのか知らないが…。「いち、にい、さん!」(日本語)で引き剥がし! 痛くて、いちいち悪態をたれる童貞男。
また、日本料理店(?)で、誕生日だから歌ってくれというと、「幸せなら手をたたこう♪〜」と店員たちが並んで歌うのは、とても変だった。
…というように、日本関係ネタが、けっこうある。
で、童貞男を惑わす美女、これが画像に載せたエリザベス・バンクス嬢だ!
誰、エリザベス・バンクスって? というあなたにお答えするが、以前「スパイダーマン2」の感想を書いたとき、私は、こんなふうに書いている。
…また、「シービスケット」で、ジェフ・ブリッジスの奥さんを演じていた美人のエリザベス・バンクスが、新聞社の社長秘書みたいな役で出ているのを知ったのは嬉しい発見。1作目から出ているのだけど、彼女とは気づかなかった。…
さすが私。美女には目がない。
本作では、エリザベスの可愛らしい色っぽいナイスな誘惑演技が堪能できる!
童貞男にキスして下唇を引っ張るところなんて、最高です!
彼女、「スパイダーマン」シリーズでは、あんまり活躍してないのが、さみしいよねえ。
それから、キャサリン・キーナーの娘役を演じた、カット・デニングス嬢もチェックしておきましょうね。(誰に言ってるんだ!?)
エンディングはなぜか「アクエリアス」を歌い出す。ミュージカルになる。楽しいねー。同僚たちも、たとえ下手ウマでも参加して歌うのだ! なぜか、ミカさんも踊ってるよ!
嬉しいです。だって「アクエリアス」って水瓶座という意味で、水瓶座生まれの私のテーマソングと思ってる名曲だから!
最後に繰り返して言うが、同僚の3人組、よかったねえ。快作!〔2007・8・26(日)〕